米朝首脳会談の決裂、実は日本にプラスだった!?
北朝鮮の不十分な非核化案が米国の失望を買ったというのだ。ただし、「トランプ大統領は決裂も想定していた」と分析する専門家も。歴代共和党政権の政策立案に関わってきたヘリテージ財団の元上席研究員で東洋大学国際学部教授の横江公美氏が話す。
「トランプ政権は北朝鮮が完全に核を廃絶する意思がないことを承知しています。一方で、過去の大統領が繰り返した過ちも認識している。クリントン政権下では米朝枠組み合意が成立し、北の核開発凍結と引き換えに40億ドルのエネルギー支援を行うことが決定。’95年に制裁を緩和しましたが、’98年にミサイル技術をパキスタンに提供していたことが発覚して再び制裁を科しました。
その後のブッシュ政権では’02年に9500万ドルを提供したことが発表されましたが、’03年初頭にかけて北は核施設の凍結を解除し、IAEA(国際原子力機関)の査察官を強制退去させる措置に踏み切りました。何度も裏切られたために、トランプ氏は無理を承知で完全な非核化を求めたのです。
そのために周到に準備していた様子もうかがえます。昨年12月に急遽決断した米軍のシリア撤退です。外交専門家の多くが今『米軍をアジアにシフトさせている』と分析しています。対中シフトでしょうが、北にとっても相当なプレッシャー。当然、非核化に前向きな姿勢を崩せない。決裂してもトランプ氏が損をしないのは明白だったのです」
米朝会談が開催されたその日、米国ではトランプ大統領の元顧問弁護士が公聴会に出席し、「’16年の大統領選でトランプ陣営の選挙担当者らがロシアのロビイストと会っていた」などと証言した。実はこのロシア疑惑から米国民の目をそらすために、トランプ大統領は決裂というショッキングな方法を選んだという見方も浮上しているが、横江氏は一笑に付す。
「そもそも、トランプ政権にとって北朝鮮の非核化はさほど重要な課題ではありません。長距離ミサイルが完成しない限り、米国の国土安全保障上は何の脅威にもならないのですから。国民の関心も薄い。だから、ロシア疑惑から目をそらすための米朝交渉という図式は成り立ちません。
では、なぜこのタイミングで会談を実施したのか? それは米中通商協議の期限が3月1日に設定されていたからと考えるのが自然です。トランプ政権は絶対に妥協しないという姿勢を、間接的に中国に示した。来年の大統領選に向け、トランプ大統領にとって最大の課題は経済にあります。
当然、通商協議で中国の譲歩を引き出されば、とてつもないプラスになる。米朝決裂を対中交渉の追い風とする……これが、トランプ流のディールなのです」
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