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なぜエリート官僚が覚せい剤に…? 霞が関・薬物汚染の謎

周囲からはむしろ真面目で仕事熱心?

 仕事で疲弊した末に薬物に走るのは、霞が関のキャリア官僚だけではない。社会的ステータスの高いビジネスマンでも、一歩間違えば、薬物の世界に足を踏み入れてしまう危険性を孕んでいる。薬物依存症を支援する全国組織「日本ダルク」でディレクターを務める三浦陽二氏が話す。 「私たちが過去に治療回復をサポートした人たちのなかには、経営者や会社役員、医師、弁護士、さらには、薬物犯罪を取り締まる側の警察官といった肩書の人もいます。そもそも依存症は、セックスやギャンブルにのめり込む『行為依存』、夫婦や親子の関係に縛られる『関係依存』、薬物やアルコールなしには生活がままならくなる『物質依存』などに分けられるが、日本で最も多いのは『仕事依存』、つまり、ワーカホリックです。  恐らく、今回逮捕された2人も、周囲からはむしろ真面目で仕事熱心と受け止められていたのではないか……。皮肉にもワーカホリックは自分が病気であるという認識を持ちにくく、目の前に与えられた膨大な仕事をこなそうと、モチベーションを維持するために依存対象を薬物にまで広げてしまった可能性が高い。責任感の強い長距離トラックの運転手が、夜中寝ないで運転するために覚せい剤を打つように……」  キャリア官僚の登竜門である国家公務員採用総合職試験の合格者のうち、東大出身者の占める割合は、32.5%だった’10年に比べ、’18年は16.8%まで激減している。給料も長時間労働の割に民間のトップ企業より安いことから、この10年で官僚離れが加速。「働き方改革」が4月からスタートしたものの、現在のような慢性的な人手不足が解消されない限り、国を動かす若きエリートを「殺す」ことになりかねない。 ▼「エリート」は薬物依存から脱しにくい  これまで多くの薬物依存症の人たちを社会復帰させてきた日本ダルクでは、薬物依存症の参加者が支援スタッフと共に、自らの体験を踏まえて意見交換するミーティングを続けている。だが、ディレクターの三浦陽二氏によると「エリートと呼ばれる人ほど、一度薬物依存症になったら、そこから抜け出すのは難しい。ミーティングを開いても、エリートの人はプライドが高く、自分のことを正直に話せない人が多い。『オレはあなたたちとは違う』『高校中退のオマエらが何を言うか!』といった態度を取る人もいます」という。自分が病気であることを受け入れることが回復への第一歩だが、輝かしい過去の栄光がそれを邪魔させてしまうようだ……。 ▼文科省では再発防止のため職員の心のケア対策を強化  5月29日、柴山昌彦文科相は職員の逮捕を受け、「学校教育に携わる人物が、このような事案を起こしたことは慚愧に堪えない」とコメント。菅義偉官房長官も「国家公務員が覚醒剤取締法違反で逮捕される事案が続いていることは誠に遺憾であり、あってはならない」と述べた。今後、文科省では職員の悩みを受け付ける体制強化に乗り出す。 <取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社> ※週刊SPA!6月4日発売号「今週の顔」より
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表紙の人/ 川栄李奈

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