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非常勤講師は年収150万円、学会も自腹…大学教員は超格差社会だった

ワーキングプアの深刻化は研究者のプライドが影響?

 非常勤講師の窮状には社会的背景があった。 「90年代までは、大学院の進学率が多くなかったんです。そのため博士号を取得してから、2、3年は非常勤で働いたとしても、大学院卒のほとんどが専任講師になれました。  ところが、91年の宮澤政権での大学院倍増計画によって、大量のワーキングプアが生じてしまった。政府が世界に通用する理系のドクターを増やそうとして、博士課程修了と同時に博士号も取得できるのが一般的になったからです。一方文系のドクターが放置され、非常勤講師が増大してしまった。30年近く経っても、状況は変わっていません」  年収の格差はもとより、窮状をさらに悪化させるのは、非常勤講師の「雇い止め」だと松村氏は指摘する。 「私が首都圏大学非常勤講師組合に入会したきっかけが雇い止めでした。2000年秋にある大学から、来年の春に契約終了と一方的に通告されたのです。カリキュラムが変更したからというあいまいな理由のため組合に入り団体交渉をしてもらって、終了を1年後に延長してもらいました。組合の役割は重要です」  非常勤講師が置かれている現象を聞くにつれて、好きでなければ続かない職業だと感じる。何とも解決策が見えない話だが、深刻化を防ぐことはできないのだろうか。 「ワーキングプアを訴えようにも、個人名や顔出しは絶対にしたくないというのが非常勤講師の本音。学生や近所の人たちに知られてしまうのが怖い。院卒者、研究者としてのプライドも影響していると思います」 <取材・文/夏目かをる>
コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ「恋するブログ☆~恋、のような気分で♪
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