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年収200万円台、大学非常勤講師の貧困事情。50代独身のつらい日々

 貧困の実情は様々だが、中にはしっかりと働き仕事で実績を挙げながら、厳しい生活を送る人がいる。
非常勤講師

木村さん

 大学で非常勤講師として働く木村隆志さん(54歳・仮名)が、自身の窮状を語ってくれた。

執筆した書籍もあるが…格差に苦しむ日々

 非常勤講師として20年以上教壇に立つ木村さんは、自ら執筆した書籍を見せてくれた。社会学をテーマに、地道に取材した20冊以上の書籍を目の当たりにすると、執筆家としても成功を収めている「大学の先生」というイメージを持つ。だが、取材に応じる表情は少し暗めだ。
大学講義

写真はイメージ(以下同じ)

「複数の大学で、週5コマの授業を担っています。1コマ90分で2万円ぐらいなのですが、長い夏休みや春休み、大型連休などで授業がない時期も多いので、専門雑誌の執筆や専門学校での集中講座などの雑収入を合わせてようやく年収230~240万円ほどになります。  ところが教授の年収の平均は1000万円ぐらい。僕らの4〜5倍ですよ。テストの作成や採点などやることは同じなのに、非常勤講師は給与にカウントされません。ものすごい格差社会で生きています」  大学教員の区分はわかりにくいのだが、常勤の専任教員(教授・准教授・助教・専任講師など)と、非常勤教員に一応分けることができる。2018年に朝日新聞と河合塾が共同で行った調査「ひらく 日本の大学」によると、国公立659校の教員のほぼ半数(約17万人)が非常勤だった(非常勤教員は薄給で、複数大学をかけ持ちしている人も多いので、のべ人数である)。 「専任教員と非常勤講師との格差は、年収だけに留まらない」と木村さんは続ける。 「専任教員には研究費が支給され、研究室を与えられるほか、学会への参加費や交通費などの費用を大学側が一部負担します。ところが非常勤講師は大学側の援助はなく、自腹で学会に出席する。  さらに専任教員は、公務員共済や私学共済などに加入することもできますが、非常勤は社会保障もなく、全額自分で掛け金を払うという国民年金や国民健康保険に入会することになるんです」 「こんなに格差があるなんて、大学の教員を志した時は知らなかった」と肩を落とす木村さん。  木村さんは高校の進学校から大学へ。在学中に、大学の教員に興味を持ち、博士課程に進んだものの、経済的な事情などから博士号を取る前に退学。そして大学の非常勤講師の仕事に就いたという。 「30代の頃は、専任講師の倍率が4~5倍でした。何度チャレンジするものの、最終選考で落選してしまって。でもいつかは専任講師になれると信じていたんです」  ところがそんなとき、政府がある政策を打ち出したのだ。 「1990年以降、文部科学省が政策転換をした結果、博士課程修了と同時に博士号を取得することが一般的になったんです。大学院倍増計画が実現されると、さらに各大学は人件費を抑えるために、非常勤職員を増員しました」  その結果、2007年には非常勤講師がこれまでの7214人から4301人増の1万1515人になった。そのため専任講師への倍率が、100倍近くに膨れ上がったという。 「これまで200以上の公募に募集しましたが、これほど激化するとは予想できませんでした。最近では、一生這い上がれないのではと思ってしまいます」
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追い打ちをかけるように、奨学金の返済が
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