仕事

パワハラ認定で左遷された46歳「空気を読めない新人を指導したら…」

 日本社会はどこに向かうのか――。経済危機が迫るなか、市民の「格差」はより拡大し、中流が新たに転落、下流はさらに困窮。一方、今まで放置されてきた人たちがさまざまな事件を起こし、令和時代の新たな「負け組」を生み出している。負け組すら多様化した日本の今に迫る!
[令和版]負け組の衝撃

大川誠さん(仮名・46歳)

部下のミスをかばったつもりが…パワハラ認定され左遷に

▼令和時代に新たに発生した「負け組」たち  企業にパワハラ防止を義務づける「パワハラ防止法」が成立し、’20年6月から順次適用される。しかし、プロスケーターの織田信成氏がコーチをパワハラ提訴した一件のように、双方の言い分が食い違ったり、加害者側が無自覚な例も散見される。この現状を精神科産業医の松崎一葉氏はこう分析する。 「日本でのパワハラの特徴は、上司側は良かれと思って指導していて、その内容自体は必ずしも間違っていないこと。加害者となる人は、部下を鍛えようとする『情に厚いタイプ』も多いですね」  広告代理店でCM制作ディレクターをしていた大川誠さん(仮名・46歳)も後進育成のための情熱でパワハラ加害者になってしまった。 「1年前の撮影現場でのこと。食事休憩中に私より2つ上の女性プロデューサーが『どうしてもなめこ汁が飲みたい!』とワガママを言いだしたんです。すでに22時を回っていたので、現場を円滑に進行するためにも新人ADに指示してみそ汁を買いに行かせたんです」  数分後、戻ってきたADが手にしていたのは8パックセットの業務用みそ汁だった。 「具はワカメだけ。『これでは彼女の機嫌を損ねてしまう』と判断し、私自らカップ入りのみそ汁を5、6種類ほど買い直しました。この手の業務は地味ですが、現場では欠かせない大切な仕事。新人にも空気を読んだ立ち回りを教えたかったんです」  その日の撮影は無事に終了したが……、翌日から新人ADは無断欠勤をするようになったという。 「後日、彼はうつ病の診断書を人事部に提出し、僕をパワハラで訴えました。僕のみそ汁の買い直しが原因だったようです」  人事部の判断は「当人がパワハラと感じたらパワハラ」。大川さんは総務部に異動することに。 「事実上の左遷です。人事いわく『厳しすぎて指導についていけない』という声が社内調査でほかにも上がっていたらしくて……」  今では後輩に気軽に話せなくなったという大川さん。 「新人を怒るのも愛情とエネルギーが必要ですが、今はもはやそのパワーはありません。また訴えられたら困りますからね」  後進育成の情熱すら、負け組に繋がる時代のようだ。 【精神科産業医・松崎一葉氏】 筑波大学医学医療系教授。精神科産業医として上場企業から中小企業まで、多くの組織で活躍。著書名である『クラッシャー上司』(PHP新書)の命名者の一人 <取材・文/週刊SPA!編集部>
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