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「伝統芸能」とも呼べる、与野党間の談合こそが、日本政治の本質だ/倉山満

55年体制のはじまり

 もともと国対は、敗戦直後の占領期に三党連立政権が成立し、与党間の連絡が必要だからと設けられた。それが正式な議会運営機関である議院運営委員会(議運)にとって代わり、裏取引の場となった。  1955年、自由民主党と日本社会党が結成された。この二党で国会の9割の議席を占める。いわゆる55年体制のはじまりだ。同時に、国対を通じた裏取引が、深刻化する。  自民党は政権を担当していなければ、何の存在価値もない。だから、常に衆議院で51%の議席を欲する。ただし、66%まではいらない。一方で、日本社会党は占領期に政権の運営に失敗し、「政権担当恐怖症」と化した。政権など担当して失敗すれば、次の選挙で落選する。しかし、何か旗印を掲げていなければ、支持者をつなぎ留められない。そこでひねり出したのが、憲法改正阻止だ。これは衆参どちらでもいいから、34%の議席があれば可能だ。ここに、自社二大政党の利害が一致する。社会党のようにやる気がない政党が野党第一党に居座ってくれれば、自民党の地位は絶対に安泰である。

自社国対政治が日常化

 国会運営を円滑にさせる為に、自社国対政治が日常化した。汚職や対決法案が出る。マスコミが騒ぎ、野党が追及する。自民党国対委員長が社会党をはじめとする野党の国対委員長を招く。裏金を渡し、野党の主張する取引に応じる。日程を調整した上で、自民党が審議を打ち切り、強行採決を断行する。テレビ中継で乱闘となるのがおなじみだが、当たり前だ。テレビ中継がある日を狙って、強行採決をするのだから。野党に「見せ場」を作ってやり、「ここまで抵抗したのに、数の力で押し切られた。次は!」との支持者向けの言い訳を用意する。  国対政治の名人と言われた金丸信は強行採決の時に突撃するカメラアングルまで計算し、竹下登に至っては過去の国会運営がすべて頭に入った上で、「前回はお前に見せ場を作ったから、今回は裏方だ」などと貸し借りを差配する名人だった。  ここまでくると「伝統芸能」としか言いようがない談合だったが、その時代の感覚を忘れられない政治家が自民党にも、社会党の後継政党である立憲民主党にも多いのだ。これが、日本政治の本質だ。  たとえば、立憲民主党の辻元清美前国対委員長などは、左翼思想の過激派と目されているが、全然違う。森山国対委員長とのパイプが、政治力の源だ。安住氏は、「55年体制最後の申し子」などと言われる。立民の枝野幸男代表も福山哲郎幹事長も、森山氏と取引できる安住氏を通じなければ国会で存在感を発揮できない。
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政治は左右の対立で動いているのではない
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