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新型コロナウイルスで国家経済を止める合理性は何なのか/倉山満

新コロはペストのように危険な伝染病なのか。新コロで国家経済を止める合理性は何なのか

 さて、菅首相は緊急事態宣言を再延長するとの不愉快な話題を聞きながら、この原稿を書いている。政府の助言者である医者の集まりである分科会(尾身茂会長)と日本医師会(中川俊男会長と尾崎治夫東京都医師会会長)と小池百合子東京都知事と世論に煽られ、菅首相は屈した。  しかし、菅首相は何の目的で緊急事態宣言を発し、二度も延長するのか。そもそも政府の助言者の医者たちが、いい加減にもほどがある。 「感染者を500人に抑えろ。感染状況をステージ3に下げるまで」と決めながら「いや100人だ。ステージ2になるまで絶対ダメだ」と言を翻す。国民に対しフルマラソンを強いながら、予想外に早くゴールしそうになると、さらに20キロ走らせるような所業だ。「感染者」だの「感染状況」だの、連中が何を言っているのかわからないが、一つだけ断言できる。今の日本政府の意思決定を簒奪している医者の助言者たちは嘘つきの集まりだ。嘘つきで悪ければ、学問のイロハを心得ていない似非学者の集まりだ。  そもそもの発端である。中国武漢で発生した新型肺炎は、世界中に蔓延した。そして、世界中が恐怖に陥った。特に欧米諸国での被害は甚大となった。当初は甘く見ていた日本政府にも、突如として緊張が走った。そして新型コロナを抑え込むため、国家経済そのものの自粛を決断する。  では、当時の日本政府と助言者の医者たちは、どのように考えたか。「新型コロナウイルスは、ペストやエボラ出血熱のように危険な伝染病かもしれない。だから、国家経済を止めるような犠牲を払ってでも、抑え込まねばならない」と説明され、新コロが未知の伝染病であったこともあり、国民の大半は納得し、協力した。昨年前半時点までは、やむを得ない決断だったと言えよう。  ところが一年が経った。「新型コロナウイルスは、ペストやエボラ出血熱のように危険な伝染病かもしれない」は単なる仮説にすぎなかった。確かに欧米など白人諸国での被害は甚大だが、それでも「少しはマシなスペイン風邪」である。わが国では「少し厳しいインフルエンザ」である。新コロをただの風邪と極言する気はないが、「ペストのように危険な伝染病」とする仮説は大きく修正されてしかるべきだろう。ところが、指定感染症の扱いなどもそうだが、いまだに日本政府は「ペストのように危険な伝染病」とする仮説を捨てていない。つまり、「抑え込む」とした政策の根拠は崩壊したのだ。

「何のために」を何も証明していない

 いまだにテレビや新聞は「感染者が何人」などと大仰に報じるが、何の意味がある数字なのか。  ここで問われるべきは二つ。新コロはペストのように危険な伝染病なのか。新コロで国家経済を止める合理性は何なのか。この二つを証明しない議論は、いかなる意味でも科学的ではない。無限にエビデンスを並べても、無意味だ。尾身だの中川だの尾崎だのは「感染者を減らせ」と絶叫するが、「何のために」を何も証明していないのだから。  国民にはマスク生活を強要し、花見も飲み会もやめろと命令するが、オリンピックだけはやる。実にいい加減で、非科学的だ。  菅さん、それでいいのか?
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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