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東大生が感動した「読むだけで、“旅”を体験できる名著」ベスト3

○『深夜特急』

沢木耕太郎 著(新潮社)
『深夜特急』

『深夜特急』

 いまでこそ遠い存在となってしまいましたが、旅行はやはりいいものです。大学生になるまで、まともに旅をしたことのなかった僕ですが、大学入学後、新幹線デビューしてからは日本のあちらこちらに飛び回るのが夢となりました。  僕は、2泊3日程度のちょっとした用事でもスーツケースをパンパンにしてしまうほどの旅行初心者なので、旅慣れている人には本当にあこがれてしまいます。特に「なんてすごいのだ!」といつも思わされるのが、ヒッチハイクや弾丸旅行ができる人です。 『深夜特急』は作家の沢木耕太郎氏による紀行小説。主人公の「私」は、「インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスで行く」という無謀極まりない計画を立て、仕事をすべて投げ出し、旅に出ます。  もともと無計画から始まった旅、そうはうまくいきません。まず、この小説の書き出しからして「私」が「次はデリーから南下してゴアに行くべきか、それとも北上してカシミールに行くべきか」と迷うシーンから始まります。日本を出てから半年、スタート地点のデリーから一向に動きません。

訪れたことがなくても鮮明に浮かぶ光景

 この本の魅力は筆者の実体験に基づく、各国の描写です。僕はこの本に出会った小学生当時、外国どころか隣町の様子すら知りませんでした。  しかし、父親の本棚にあるこの本を手に取ったとき、作中で描写されているインドの安宿の退廃的で、官能的で、人を縛り付けるような暗く重たい空気をたしかに感じ、強い衝撃を受けたことを覚えています。  そのような宿に泊まったことはありませんし、見たことすらありませんが、あの日の僕の脳裏に浮かんだ「バックパッカーたちが沈んでいく宿」の光景は、いまだに思い出すことがあります。 「旅をしている気分になりたい!」というのであれば、僕の知る限りでは最高の一冊です。
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旅に出なくても新しい世界を見せてくれる
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