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神宮外苑再開発の陰で蠢く政治家たち<ノンフィクション作家・山岡淳一郎氏>

小池知事はストップをかけるか

―― 小池百合子都知事は環境政策を重視していますが、外苑を破壊する再開発に待ったをかけるつもりはないのでしょうか。 山岡 新聞報道によれば、小池氏は5月27日の記者会見で「多くの都民の共感と参画を得ながら進めていくことが鍵だ」と述べ、三井不動産などの事業者に対して必要な資料をしっかりと提出し、真摯に対応するように要請したことを明らかにしました。しかし、この再開発計画は都知事が承認したからこそここまで進んできたのであり、いまさら共感と参画などと言っても説得力がありません。これでは単なるガス抜きと見られても仕方ありません。  本当に都民の共感と参画を得ようと思っているなら、いったん再開発を中止し、都民と事業者、地権者が公開で討論するような場を設けるべきです。これこそあるべき都市づくりの姿でしょう。  小池知事にはそれをやれるだけの力があります。現に、小池氏が築地市場移転問題に対処した際は、すでに豊洲市場の開場日が決まっていたにもかかわらず、それにストップをかけました。そこから考えれば、小池氏が外苑再開発をいったん中止することは決して難しくないはずです。  おそらく小池氏は、外苑再開発に伴って1000本の樹木が伐採されることが最初に報じられたとき、この問題はそれほど大きくならないだろうと甘く見ていたと思います。しかし、都民の間でだんだんと関心が高まり、批判の声が強まっているので、小池氏も内心焦っているはずです。  7月には参院選が予定されています。東京選挙区からは、小池氏が国政に送り込もうとしているファーストの会の荒木ちはる氏が出馬することになっています。東京選挙区は大混戦が予想されており、荒木氏が落選すれば、小池氏の政治力にも影響を与えます。そのため、小池氏が参院選への影響を見据え、再開発にいったんストップをかけることも考えられます。今後も小池氏の言動を注視していく必要があります。 (6月4日 聞き手・構成 中村友哉 初出:月刊日本7月号>) やまおかじゅんいちろう●ノンフィクション作家。著書に『コロナ戦記 医療現場と政治の700日』岩波書店、『ドキュメント感染症利権』、『原発と権力』ともにちくま新書ほか多数。時事番組司会、コメンテーターも
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2022年7月号

【特集1】安倍晋三よ! 永田町から退場せよ
【特集2】神宮外苑再開発 鎮守の杜を守れ

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