やりがいだけが頼り!? 低賃金で働く「介護業界」の実態
アベノミクスで景気が上向いたと言われるが、賃上げやボーナスの増加でホクホク顔なのは一部の大企業だけ。その恩恵に与れず過酷な状況にあえいでいる業界は多い。共通するキーワードは「長時間労働」と「定額残業代」だ。介護、飲食、IT、アパレルetc.の悲惨な経営環境、労働実態をリポートする!
◆手取り200万円台。ローンも組めず、「やりがい」だけでは無理【介護業界】
「手取りは200万円台。家のローンは組めないし、子供もつくれない。転職するしかない、というのが正直な感想です」
北関東の特別養護老人ホームで働いている沢井恒雄さん(仮名・29歳)は、5年前に現在の職場に就職。利用者から感謝されたり、スタッフから頼りにされたりと日々やりがいを感じてはいるが、給料は残業代込みで月23万~24万円。ここ3年賃上げはなく、ボーナスは年間数万円程度。公益財団法人介護労働安定センターが取りまとめたデータ(’12年度・下記資料)によると、介護労働者の残業代を含む実賃金は、全体で平均23万3666円。だが、内訳を見ると、訪問介護員(20万731円)や、介護職員(21万8000円)はさらに低い。
⇒【資料】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=708440
一方、現在の仕事を選んだ理由を聞くと、「働きがいのある仕事だと思ったから」が54.9%と過半数に上る。しかし、労働条件などの不満を尋ねると、「仕事内容のわりに賃金が低い」が43.3%とトップで、「有給休暇がとりにくい」も35.6%と少なくなく、沢井さんの現状に非常に近い。
居宅介護施設に勤務する内田昭次さん(仮名・37歳)は、入浴介助を中心に担当していたが、若手の職員が相次いで退職したため、休日出勤や夜勤が増加、腰痛を患った。
「施設長は労災を申請するか考えると言ったきり。現在自宅で療養していますが、有給休暇を消化して以降は収入ゼロです。労働基準監督署に相談に行く予定ですが……」
介護業界の悲惨な状況は、主に介護報酬の安さに起因している。そのため、経営状況が思うように良くならず、現場の介護労働者にそのしわ寄せが来るというのが実態なのだ。
「介護報酬が改善されないことにはこの業界に未来はないですね。異業種の大手企業から続々参入していますが、経営手腕でどうにかなるものでもありません。良質な人材がいてもそれに見合った処遇ができなくなっている今の介護保険制度が変わらないことには」
こう話すのは、都内で複数の特別養護老人ホームを経営するT氏。マスコミの報道も手伝って介護現場のイメージは年々悪化しており、若年層の就職先に選ばれなくなっているという……。
― なぜこの業界は、不景気のままなのか?【6】 ―
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