日本は原発テロの狙い目!? 「イスラム国」事件で高まる危険性
福島第一原発の事故収束も一向に進まず、IS人質事件の余波でテロの危険性も高まっている。そんななかで日本は原発再稼働・輸出に邁進。日本の原発は本当に安全なのだろうか?
◆警察は対応能力なし、自衛隊は準備なし。日本はテロの狙い目!?
「イスラム国」(IS)人質事件後、最も危険性が高まっていると思われるのが「原発テロ」だ。ところが、「これから日本にとって悪夢が始まる」「すべての日本国民が今やイスラム戦闘員らの標的になった」と宣言されてもなお、日本政府は原発テロ対策強化を言い出そうとはしない。
元陸上自衛隊幕僚長の冨澤暉氏は「テロリストが狙うとすれば、いちばん効果的なのは原発。日本の原発は、他国よりもずっと対策が遅れているのです。原発テロゲリラ対策を早急にしなければ、日本は福島第一原発事故以上の被害を招く」と警告する。
「日本には原発テロを防ぐ態勢が整っていません。(『イスラム国』だけでなく)孤立化を深める北朝鮮が暴発するリスクも高まっています。細川政権時代、北朝鮮とアメリカが戦争寸前の状態になった際、当時の石原信雄・官房副長官が各省の役人に有事対応を考えるように指示しました。これを受けて警察庁の警備局長が私に意見交換を求めてきました。『大変な問題がある。北陸の原発がテロゲリラに襲われたとき、我々にはどうしようもありません』と切り出し、『機関銃やロケット弾を持ってくるテロゲリラに対応しようとしても、全国のスナイパーは50~100人ぐらい。しかも十数人の集団が襲ってくることは想定していない。そのとき自衛隊は、出てくれますよね』と聞いてきたのです」
冨澤氏は「そのときは(戦争状態となる)防衛出動が出ているのですか」と質問、警備局長からは「防衛出動ではなく、治安行動でしょう」という回答が返ってきた。それを受けて「治安行動はできません。何十年間、治安行動の訓練はしていない」と要請を断った。ここに日本の原発テロ対策の重大な欠陥があるという。実は’70年以降、自衛隊は治安行動の訓練をやめてしまっていたのだ。
「原発テロ対策は一義的には警察の役割で、自衛隊のほうはやりたくてもそういう役割が一義的にない。自衛隊は『警察予備隊』から始まりましたが、テロゲリラ対策では警察の予備にしかすぎない。警察がお手上げになって自衛隊が出て行っても、人を殺さずに相手を逮捕するのが『治安行動』の基本。自衛隊はそんな訓練は’70年からしていませんし、そんな生ぬるいことで対策はできません。テロゲリラにとっては、日本の原発は非常に狙いやすい脆弱な状態にあると言ってよいでしょう」(冨澤氏)
【冨澤暉氏】
’38年生まれ。元陸上幕僚長。「日本の原発でテロが起こる危険性」とその対策の脆弱さを以前から指摘し、原発テロ対策が日本の安全保障の緊急課題であると訴えている
取材・文・撮影/横田一
― 「イスラム国」事件で[原発テロ]が起こる!【1】 ―
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