中国が“人材流出”でますます沈没船化。金融・経済のプロから料理人まで
6月下旬から乱高下を繰り返えす中国株。その原因の一つとして「金融当局からの頭脳流出がある」との見方が出ている。
8月27日付でロイター通信が報じたところによると、証券行政を担当する中国証券監督管理委員会は、これまで欧米の大学で学位を取得したり、海外の金融業界で活躍する中国人エリートを積極的にリクルートして精鋭を揃えていた。ところが、民間企業に比べて低い給与や昇進の機会制限、官僚主義の蔓延を理由に彼らの多くが離職。これにより、市場が素人の手に委ねられたことが中国株暴落の背景にあるとしている。
しかし、「切迫した問題ではない」と言うのは、立命館大学政策科学部の准教授・上久保誠人氏だ。
「中国の金融当局は、海外で学んだ有能な人物を重用し、経済理論に基づいた政策運営を行っているのは事実。ただ、ハクを付けるためだけに政府に入る人もいるので、離職率は高くても仕方ない。代わりになる人材もまだまだいくらでもいる。中国は、アメリカと同じように、官民を行ったり来たりする『回転ドア』構造。日本の天下りのような官から民への一方的な移動とは対照的なので、また戻ってくる人材もいるのではないか」
一方、人材流出の波は金融界以外にも押し寄せている。広東省広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・46歳)は話す。
「近所で安くてうまい食堂があったんですが、めっきり味が落ちた。聞くところによると、コックが最近、海外に移住したらしい。実績のある調理師は、日本をはじめ、どこの国でも比較的ビザが取りやすいので、こうした話は珍しくない。外資系ホテルに入る高級レストランに引き抜かれる例もあり、このままでは大衆店はマズい店ばかりになってしまう……」
北京市在住の日本車メーカー勤務・内田義隆さん(仮名・44歳)は、中国の“陰の基幹産業”からの人材流出を憂う。
「当局が昨年からの掃黄(風俗取り締まり)の手を緩めないなか、私の知ってる風俗嬢たちの多くは、安心して稼げる場所を探し、海外に行ってしまった。シンガポールやマレーシアが多いようです。これでは風俗産業が復活したとしても、小姐のレベルは前と同じというわけにはいかないでしょう」
昨年、国連が発表した「世界移民報告」によると、’13年に海外移住した中国人は930万人に達し、インド、メキシコ、ロシアに次いで世界第4位の移民送り出し国となっている。
業界の枠を超えて広がる人材流出の背景について、中国事情に詳しいジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰氏はこう語る。
「国有企業も凋落し、反腐敗運動が続くなかで公務員のうまみもなくなった。かといって、民間企業にも安定したジョブポストがない。その上、社会不安や環境汚染など、生活上のリスクも増大している。そんななか、海外に出るチャンスがあれば出るというのは当然の選択でしょう。受け入れ国側は、自国にとって有益と判断される人材のみにビザを発給するわけですから、こうした状況が続けば中国には生産性の低い人材のみが残ることになるでしょう」
限られた救命ボートしか備えていない沈没船に見えるが…。
<取材・文/奥窪優木>
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
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