京都にちょこっとだけ開通した新名神は、まるで無人の荒野を往くが如し
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
去る4月30日、新名神の城陽JCT-八幡京田辺JCT間3.5kmが開通したので、実走してきた。
わずか3.5kmとは言え、一応天下の新名神である。しかし交通量は恐ろしいほど少なく、ピカピカの4車線道路は無人の荒野の如し。まるでSFのような光景だった。
しかも現場には「新名神」の文字はごくわずかで、案内標識には「京奈和自動車道」「第二京阪道路」の文字ばかりが目立つ。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1338025
それもそのはず、この3.5kmは、この2本の道路を接続するために建設されたのである。
前後の新名神(大津-城陽間および八幡京田辺-高槻間 合計36km)は、15年前の道路公団民営化議論によって建設が凍結。そのまま凍結が続けば、城陽-八幡京田辺間は、ポツンと取り残された孤島のような新名神になる「はず」だった。
その場合、新名神という呼称はかえって混乱を招く。案内標識に新名神の名前がないのは、それが理由だ。
前後区間の建設が凍結されたのには、理由がある。
新名神の大津-高槻間は、名神高速と並行する京滋バイパスおよび第二京阪道路に、さらに並行する形になり、完成すると3本の高速道路が並ぶ。これはさすがにムダだということで、民営化委員だった猪瀬直樹氏が、小泉首相(当時)に建設凍結を進言した唯一の区間なのだ。途中の城陽-八幡京田辺間のみ、連絡道路として残されたのである。
ただ、当時の日本には「高速道路建設はすべてムダ」という空気が蔓延しており、大マスコミは「民営化の成果はたったのこれだけか」と、非難一色だった。
2009年、これに異を唱えたのが橋下徹大阪府知事(当時)だった。橋下知事は、京滋バイパスは新名神の代替路たり得ないと主張。「猪瀬さんが命がけで取り組まれ、世間も後押しした経緯もあるが、国土軸を貫く基幹道路ということを説得したい」と、建設凍結解除を要望した。
事業者のNEXCO西日本も、「危機管理の点からも絶対に必要な道路。当然、着工しないといけない」と、新名神の全線建設に執念を燃やしていた。
紆余曲折の末、2012年に民主党政権が凍結を解除。新名神は2023年度中に全線開通する運びとなった。つまり、現状の孤島状態はあと7年で終了し、ばんばんクルマが走るようになる。並行する名神や京滋バイパスの渋滞も、ほぼ完全に解消されるだろう。
1
2
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
記事一覧へ
記事一覧へ
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ