曲芸競技!? 意外と知らない謎の競技「新体操」は東京五輪観戦の穴場か?
~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第46回~
フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。
「リボンをヒラヒラクルクルする曲芸」
「軟体人間」
「山崎浩子」
これが大半の方の新体操に関する全知識ではないのか。そんなことすら考えさせる謎の競技・新体操。最近では男子新体操が新鮮なネタとして採り上げられるなどしていますが、本丸であるところの女子の新体操はどういうものなのかいまだによくわからないところがあります。
今回はその辺りの謎に迫るべく、群馬県は高崎市で行なわれました「第35回世界新体操選手権大会 第9回アジア新体操選手権大会 第15回アジアジュニア新体操選手権大会日本代表選考会 第29回ユニバーシアード競技大会新体操日本代表決定競技会」に行ってまいりました。大会名が数え役満なみにゴテゴテしていますが、早くもすでに「わかりやすく自分たちのことを伝えたい」という気持ちがまったくない感じが、謎っぽくてイイですね。
日本体操協会からは
「当日は大変多くのお客様がご来場されることが予想されます」
「アリーナ外にご整列いただける時間は7時45分からとなります」
「状況により、後方側の観客席を開放いたします」
などとパニックへの警戒感を漂わせる事前の案内もあり、あるいは大人気だったりするのだろうかと心配しながらの訪問。
すると、謎世界の内側ではいきなりすごい熱狂が。
主催者発表で約1200人という大観衆がスタンドを埋めているではありませんか。いわゆるメインスタンド側は満杯でバックスタンド側にも観客を詰め込んでいる状態。これは事前の警告にもあった「状況により、後方側の観客席を開放いたします」そのもの。五輪でメダルを獲得した競技でも、こんなに人がいることはまれ。ましてやココは群馬です。東京よりもより敷居は高いはず。大したものです。
もちろんスタンドを埋めている観客の大半は関係者・親・試合に出ない選手という内輪の人間なのですが、それは穴場競技では当たり前のこと。たとえばシンクロナイズドスイミングでは、出ている選手も応援している観客も井村シンクロクラブ関係者だらけでしたし。内輪でもこれだけ集まるならスゴイと言わざるを得ない、穴場とは呼びづらい大観衆です。
さらに驚かされたのが応援の熱気。9割方が女性というスタンドからはものすごい大声援が。特にスタンドの一番イイところに応援団を配置した東京女子体育大学と日本女子体育大学の応援合戦は試合以上の大迫力でした。演技が始まる前は「ガンバー!しっかりー!」と選手に声掛けし、技を決めれば「ナイスー!」と声を上げる。そんなにスゴくない感じの出来栄えでも、大歓声でスゴく見せてしまうほどに声がデカい。オンナの花園というよりオンナの戦場といった激しさです。
そんな熱狂のなかで始まった謎解きの時間。そこでまず新体操に関する根本的な思い違いを見せつけられます。新体操というのは「リボンをヒラヒラクルクル」に代表されるように、あの道具を使って曲芸をする競技というふうに思われている方が多いのではないでしょうか。それは実は、根っこのところでは違うのです。
リボンをヒラヒラクルクルはあくまでサブ要素であり、根っこにあるのはやはり体操。「身体難度」と呼ばれる体操的な要素をこなすことがベースとなります。新体操の身体難度は「ジャンプ」「バランス」「ローテーション(スピンすること)」および「ダンスステップコンビネーション(ダンス風の自由な動き)」で構成され、1演技中に9個まで行なうことができます。
この身体難度9個をこなす際にセットで、リボンなどの手具をヒラヒラクルクルさせたりすることが条件となっている、というのが順番。フィギュアスケート的に言えば、ジャンプやスピンといった根っこの様子(身体難度)があったうえで、両手をヒラヒラ(手具の扱い)しているという順番なのです。我々は何十年もリボンのほうばかりを見ていましたが、根っことなるのはその間にやっているジャンプだったり、回転だったりしたのです。「山崎浩子さんからそんな話聞いたことがないです!」という筋違いの憤りもわきたつような気持ちです。
なので、手具のほうは最低限の動きというか、「上に投げて手でキャッチする」とか「ヒラヒラクルクルさせる」とか「クラブで床をポコポコ叩く」などのどうでもいい動きも頻繁に見られます。ジャンプしながらリボンを上に投げてキャッチするだけなら誰でもできそうなものですが、あくまでもそれは「手具の扱いを何かしら入れないと身体難度として認めてもらえない」から入れているだけで、本当に見るべきは身体の動きのほうだった。だから「曲芸」じゃなくて「新体操」なんですね。
その発想の転換をしたとき、さらに驚く光景が目の前では展開されていきます。
意外に知られていない新体操競技の中身
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