更新日:2022年08月31日 00:24
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現役レゲエ歌手・leccaではなく2児の母として都議選に挑む――都民ファーストの会・斎藤礼伊奈の本気度は?

 6月23日告示の東京都議会議員選挙(以下、東京都議選。7月2日投開票)。最大の焦点は、小池百合子知事率いる「都民ファーストの会」が、自民党に代わり第一党となるかどうか。が、今回のように政局の要素が強い選挙では、時として、候補者個々の資質や人となりを見ず、政党のみを見て投票する流れもできやすい。事前予想で優勢とされている「小池新党」の各候補者は、政治家としてどんなビジョンを持っているのか――候補者の素顔に迫ってみる。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1351266 【短期集中ルポ「小池新党は都政を変えられるのか?」第4回/南多摩・斉藤礼伊奈候補】

新人候補は現役バリバリのレゲエ歌手

 2016年6月13日の13時頃、東京・西新宿の都庁からほど近くにある都民ファーストの会の事務局を訪ねた。都民ファーストの会・南多摩(多摩市、稲城市)担当の斉藤礼伊奈候補(38)にインタビューをするためだ。  教えられた住所をたどっていくと、新宿中央公園のすぐ目の前、1階にレトロな喫茶店が入った、レンガ色のビルに着いた。一見、普通のマンションのようにも見えたが、階段で2階に上がると、小ぎれいなオフィスフロアになっており、一般企業も入居していた。  その一角に「都民ファーストの会」と書かれたドアを見つけ、インターホンを押して取材に来た旨を伝えると、「ちょっと待っててください」という男性の声が帰ってきた。しばらく待っていると、ブルーのジャケットを羽織った斉藤が、同じくドアの前にやってきた。  斉藤が「取材の方ですよね?」と、ていねいにもドアを開けてくれたので、事務局の中に入ることができた。フロアの床にはグレーのカーペットが敷かれており、奥の事務所スペースから早足でやってきた30代くらいの男性スタッフが、「こちらへどうぞ」というまま、細ながい会議室のような部屋に通せられた。  部屋にはすでに私服姿の男性一人がおり、誰かと思ったが、名刺を交換すると「エイベックスマネージメント株式会社」とある。何を隠そう、都民ファーストの会所属の斉藤礼伊奈は、2012年に単独武道館公演を果たした、現役バリバリのレゲエ歌手・leccaである。どうやら、男性はそのマネージャさんらしい。  政治家としてのインタビューに、なぜエイベックスのマネージャーが来るのかという疑問はあったが、そうこうしているうちに、都民ファーストの会の広報担当者の女性まで来た。3対1の取材となり、政治家ではなく、まるでアーティストの取材のようだ。慣れない展開にすこし緊張しながら、筆者はインタビューをはじめた。

歌手として社会問題に向き合ってきた

 アーティストとしてのツアーを6月10日に終えたばかりの斉藤は、その翌日に地元多摩で都議選のための事務所開きをし、さらには2歳と6歳の子供の母親として子育てにも奔走するなど、慌ただしい日を送っていた。  音楽と子育ての両立だけでも、大変なものと思われるが、さらに苦しいスケジューリングになるのを覚悟してまで、斉藤に政治を志させたのは、小池百合子東京都知事の存在と、夫のサポートだった。 「待機児童の問題や保育士の待遇改善に素早くきめ細やかに取り組む小池知事の元で学びたいと、毎晩パソコンの前で悩んでいた私に、『やらないと後悔するから絶対にやるべきだ。周囲のみんなも待ってってくれるよ』と夫が言ってくれたのです」  実際、4月頃に、斉藤が都議選候補者として内定したという情報を知ったファンたちの反応は暖いものだった。ブログに寄せられたコメントのなかには、音楽活動への影響を心配する声もあったが、そのほとんどは「頑張ってください」というような肯定的なものだったのだ。  そうしたファンの反応は、斉藤の楽曲とも関係している可能性がある。2017年3月に発売された最新アルバム『High Street』に収録されている楽曲『Woman』では、「働きすぎでまともに眠っていないから頭も冴えない」という、2016年に騒がれた電通の新人女性社員の過労死問題を彷彿とさせる歌詞もある。  2011年の東日本大震災では支援活動をきっかけに、被災地である岩手県釜石市の観光親善大使になった。そのほかにも、子宮頸がんの啓発イベントへの出演など、以前から社会的な活動に携わってきた歌手・leccaのファンにとって、斉藤の出馬はそれほど意外なものではなかったのかもしれない。 「私は自分で作り歌ってきた歌詞や楽曲のすべてに、メッセージを込め、社会的な問題に向き合ってきました。歌手という経歴に否定的な意見を持つ人もいると思いますが、自分がやってきたことの“中身“を伝えていければ、と思います」
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「働く母親」にとってハードな現状を変えたい
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