孤独死は入居者に「告知しない」が業界慣行。真夏の死体発見直後の事故物件に行ってきた
わずか数日で周囲が通報するぐらい強烈な腐臭を発する真夏の孤独死。そんな背筋が寒くなるような物件でも次の入居者には告知せずに貸し出される……。
事故物件情報サイト「大島てる」。そこには、自殺、他殺、事故死などの死にまつわる様々な物件情報で溢れている。その中でも、夏場に多く投稿されるのは、熱中症などが原因による孤独死だ。事件性がないため死体が長く放置されがちで、その多くは隣人が死体やゴミの異様な臭いで通報するケースが多いという。
その孤独死物件の不動産業者の取扱いはどうなっているのか? 現場の「死臭」とはどの程度のものなのか? 今回、大島てるのサイトの最新情報をもとに緊急取材した!
◆猛暑のなか、テープで目張りされた住宅へ
都心でも記録的な猛暑日が続く8月某日。死体発見との投稿があったのは、湾岸エリア近くの都営住宅だ。さっそく物件の最寄り駅前に降り立つと駅の近くには、巨大なショッピングセンターと瀟洒なタワーマンションがそびえ立っている。駅から徒歩で15分ほど歩くと、古めかしい都営住宅がひっそりとたたずんでいた。その中でも、一つだけ、目を引く部屋を発見した。その部屋だけ、緑のビニールテープでいたるところに目張りされていたのだ。換気扇やポストにまでいたる徹底ぶり。若干鼻をつくような消臭剤の臭いがする。
サイトの運営者である大島てる氏によると、翌日までに清掃が終わっているのは、レアケースだという。
「死体を運び出すのは警察ですが、清掃業者を呼ぶ、呼ばないは、管理会社の任意なんですよ。ただし、URや都営住宅の場合は決まったルールがあります。その反面、民間の賃貸アパートは、なにもしない場合もけっこうあります。窓を開けっ放しにするだけで、次の入居者が決まるまで、放置というケースも多いのです」
2件目に行ったのは下町地区にあるUR賃貸住宅。こちらは、吐き気を催すほどの死臭が立ち込めている。湿気と臭いが入り混じって、熱風とともに流れてくる! 該当の部屋には目張りもなく、トイレの部屋と思われる窓も開けっ放しのようだ。しかも大きなハエがブンブン飛び回っている! 死体はもうないはずだが、ここまでの臭いは耐えられるものではない……。
◆真夏の孤独死の悲惨さ
大島てる氏によると、「おそらく、隣の人の部屋にも臭いは入りこんでいるはずです。孤独死の場合、死体がどうしたら見つかるというと、やはり圧倒的に臭いなんです。夏場だと亡くなって2~3日で、周囲が通報したくなるレベルの死臭がすることもあります。高齢者は、働いていない人が多いので、通報が遅れがちです。ただし1人暮らしの会社員の場合でも、放置される場合もある。金曜日に亡くなると、同僚や上司などがおかしいな、と部屋を訪ねてくるのは5日後ぐらい。人の原型はありますが、全身腐乱で、DNA鑑定などをしないと身元がわからない状態のことも……。ミイラや白骨死体よりも夏場の腐乱死体のほうが状態はひどいんですよ」
◆熱中症死は自然死で告知義務はない!?
大島てる氏の話では、民間の賃貸住宅の場合、熱中症は自然死と同列に扱われ、不動産業者は、自殺や他殺のように告知義務はないと(勝手に)解釈して、何事もなかったかのようにリフォームや清掃ののちに、次の入居者に貸し出されることになるという。(都営住宅やURは次の入居者には告知する)
「自殺でも他殺でもないから、義務として言う必要はないというのが業界の平均的な見解ですね。だから不動産屋が教えてくれることはほとんどありません」
自然死の事故物件の見分ける際の、てる氏のアドバイスとしては、他の部屋に比べて異様にキレイな部屋は要注意だとのこと。また、今年10周年となる大島てるのサイトの情報も、物件選びの際に大いに役立つはずだ。
<取材・文/菅野久美子 写真・Isao Nishi、田中正清>
●事故物件公示サイト: 大島てる CAVEAT EMPTOR http://www.oshimaland.co.jp/
●大島てる アンドロイドアプリ https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.oshimaland.map&hl=ja(かんの・くみこ)ノンフィクションライター。最新刊は『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『孤独死大国 予備軍1000万人のリアル』(双葉社)等。東洋経済オンライン等で孤独死、性に関する記事を執筆中
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ