「俺は美女を見たら無条件に口説いてキスをする。女はスターにこうされることを望むんだ。俺はドナルド。スーパースターだからな」
「そうだドナルド、お前はスターだ。何をしても許される」
「あっちの女を見てみろ。たまらない脚だぜ。クソッ、舐めてぇ」
アメリカ大統領選の期間中、ドナルド・トランプ氏の10年前の失言が暴露された通称「ロッカールームトーク」は大統領候補にあるまじき女性蔑視発言として非難の的となった。同時に「hot as shit」「pussy」など、タランティーノ映画で頻出するようなスラング、バカ話をエグゼクティブが嬉々として語る姿に、アメリカの懐の深さを感じたのも事実である。
政治問題や公人の倫理感について考察するのは本稿の趣旨ではないため控えるが、今回の大統領選の結果は建前ではなく本音が勝利したという見方もある。そしてこのたび、本能に忠実なアメリカの国民性をそのまま体現したようなお店が六本木に誕生したという。早速、足を運ぶことにした。
伝説の夜の名店が日本、初上陸!
1993年にニューヨークで産声をあげ、現在、全世界で23店舗を展開する伝説のバーチェーン「コヨーテアグリーサルーン」。そのアジア第1号店が、今年12月、六本木にオープンした同店だ。’00年に公開された映画『コヨーテ・アグリー』で描かれたお店の様子は、客席に向かってチェイサー代わりにビールサーバーをぶちまけるなど混沌そのもの。そんな狂乱と喧噪の世界観をつくり上げるのは、“コヨーテガール”と呼ばれるセクシーな女性バーテンダーたちの存在。お酒を提供しながら自らカウンターの上に立ち、大音量のカントリー、ロックミュージックに合わせて踊り、歌うのだ。
「コヨーテガールの応募総数は300人以上。フリースタイルの歌、ダンス、そしてノリの良さなど、厳しい選考を重ねて30人程度に絞り込みました。映画と同様、個性豊かな面々が揃いましたよ」(マネジャーの後藤遊氏)カウンターに座り、ガールズバーの感覚でゆったりとグラスを傾けていれば、コヨーテガールから「飲み足りないんじゃない?」と一喝。カウンターに横たわった女性の体に置かれたショットグラスにテキーラが並々と注がれ、そのままグイッと飲み干すことに。
周囲で巻き起こる拍手と嬌声、そしてアルコール濃度の高さに、体中の血が逆流したように熱くなる。目線を上に移せば、腰をくねらせながら、音楽に合わせて激しく踊るコヨーテガールの姿。体温や肌のにおいまで漂ってきそうな至近距離……ものすごい迫力だ。店内の雰囲気がそうさせるのか、アガらずにはいられないテンション。気づけば拳を突き上げ、喉がかれるほどに絶叫している自分がいた。コヨーテガールが口火を切り、客も一体となってオールナイトで繰り広げられるパーティ空間――夜の黒船が来航した瞬間を目の当たりにする夜であった。
【コヨーテアグリーサルーン六本木】住:港区六本木3-12-6 六本木プラザビル8・9F
電:03-6432-9858
営:19時~翌4時
休:日
料:各種ドリンク700円~ 150坪以上の2フロア。吹き抜け上部の2F部分は席チャージ1万円がかかる 撮影/石川真魚
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スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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