6度のガンから復活した金髪医師のロック魂!
書店の闘病記コーナーに、場違いな感じの本が並んでいた。オールバックの髪を金髪に染めたオヤジがステージでエレキギターをかき鳴らしている写真が表紙。で、タイトルが『癌!癌!ロックンロール』って、何だコレ? と思ったら、「金髪ドクター、6度の癌宣告&6度の復活」とのアオリ文句が目に飛び込んでくる。この人、ミュージシャンじゃなくて医者なの? ていうか、「6度の癌宣告」ってどういうこと?
「最初は2005年の暮れ、ノドの違和感を覚え検査したところ、下咽頭ガンが見つかりました。すぐに手術し、その後は元気に暮らしていましたが、昨年7月に舌ガンを発症。摘出手術をしましたが、今年1月に再発し、また手術。さらに4月に舌根部ガン、食道ガン2つが見つかり、計6つになりました」
笑顔でそう語るのは、同書の著者・赤木家康さん(54)。「語る」といっても、現在はほとんど声が出ない状態なのでiPadを使っての筆談だが、意思疎通に問題はない。今年5月の手術で下咽頭を摘出するまでは、プロヴォックス(留置型人工喉頭)という機械を使った「シャント発声法」で、普通に会話もできたという。
トレードマークの金髪にジーンズ姿の赤木さんだが、こう見えても職業は医師。しかも、行列ができるほどのカリスマ整形外科医なのだ。「病院で病気の人を診ながら、“明日は我が身”と考えていませんでした」と苦笑するが、ガン発覚後、即断即決で手術を受けたのは医師ならではの感覚か。9月に6つめのガン手術を終え、11月18日には週イチで外来診察を再開したというから、そのタフさとパワフルさには驚くばかり。
そして、赤木さんのもうひとつの顔がPRSギターのコレクター&プレイヤーだ。ガン発症で生前給付された保険金をギター購入に注ぎ込み、療養中にはここぞとばかりギターの練習。復活ライブには“追っかけ”の患者さんが詰めかけ、舌ガンの手術後にはローリング・ストーンズのベロTシャツを着てステージに立った。自宅の地下室には約100本のギターが飾られ、ちょっとしたギター博物館のようになっている。
「本の発売に合わせて、明治記念館で出版記念パーティをやったんですが、そこでも10曲演奏しました。あそこでロックバンドが演奏したのは初めてらしいですよ(笑)」
そんな赤木さんの超前向きな闘病生活が綴られた『癌!癌!ロックンロール』。その中でガンになって「良かったこと」と「悪かったこと」を箇条書きで挙げている部分があるのだが、差し引きして「やはりガンになって良かったということでした」と結論づけているのがまたすごい。「もしガンにならないであのまま仕事を続けていれば、心筋梗塞や脳梗塞などの病気で倒れていたと思います」「人は一度生まれて、必ず一度死にます。死なない人はいません」「ガンはいい病気だと思います。事故や心筋梗塞、脳出血などと違って、ガンは死ぬまでの時間があります。死のその時までに人生を振り返ることも、旅立ちの準備もできます」といった言葉にも説得力あり。
ガンというとどうしても暗いイメージがつきまとうけれど、こんなにエネルギッシュなガン経験者(しかも6度も!)がいると思うと、それだけで何だか気持ちが軽くなる。日本人の3人に1人はガンで死ぬという時代、決して他人事ではないはずだ。
取材・文/新保信長
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