混迷する世界情勢…各国の軍艦名から見えてくる国民性とは【コラムニスト木村和久】
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その98 ―
子供の頃、プラ模型で連合艦隊から護衛艦、南極観測船「ふじ」までこさえてた、ユルい艦隊マニアでした。その過去の趣味を活かし、今の世界情勢を艦船名から覗いてみます。
地中海に展開にする、フランス海軍の原子力空母「シャルル・ドゴール」から飛び立った戦闘機が、ISの拠点へ空爆を始めました。この空母は米軍以外では唯一の原子力空母で、フランス海軍の旗艦でもあります。シャルル・ドゴールは蒸気カタパルトを採用しており、戦闘機の離陸時に時速300キロぐらいまで加速ができ、多くの物資が積めます。だから重い爆撃機も空母から、発艦できるのです。
フランスの航空母艦の名は有名指導者の名前が多く、過去には第一次世界大戦の立役者「クレマンソー」、古くはヘリ空母「ジャンヌ・ダルク」というのもありました。シャルル・ドゴールはドゴール大統領の名前から拝借したもので、彼は第二次大戦の英雄として、今でも崇められています。パリが占領されてもイギリスに亡命し、自由フランス政府を作って、徹底抗戦した英雄中の英雄。今回の爆撃が空母「シャルル・ドゴール」からというのは、決してテロに屈しないという強い意思表れなのでしょう。
一方、史上最強海軍のアメリカは、どうでしょう。アメリカ海軍の大型空母は、ニミッツ級と言いますが、現在の多くは大統領の名から取っています。日本近海の第7艦隊に「ドナルド・レーガン」が配備されており、最強とも言われてます。大統領の名の空母をずら~と書きますと「ジョージ・H・W・ブッシュ」って、まだ生きとるじゃないですか。「ハリー・S・トルーマン」「エイブラハム・リンカーン」「ジョージ・ワシントン」など、戦争で勝った偉人級がずらり。
アメリカの空母・軍艦は過去において、凄い名前があります。それは第二次大戦の戦勝地を、よく使っていたからです。例えば空母「ミッドウェー」はミッドウェー海戦からです。同じく「コーラルシー」、これは珊瑚海海戦から。「レイテ」という艦船もありました。ここらへんはいいけど、昔の強襲揚陸艦に、これはどうなのって名前がありました。強襲揚陸艦「イオージマ」「オキナワ」って、あんたいくら激戦地で勝利したからって、日本の地名を、そのまま使うか。日本人の国民感情は、当時無視されてたんですね。さすが元海賊のアングロサクソン民族、映画「プレデター」を作る国です。戦利品として、相手国の地名を艦名にしたのでしょう。
ちなみに日本は、海軍・海上自衛隊とも大型艦は律令制時代の国名「加賀」「日向」「出雲」などを使用しています。小型艦は、山の名前や河川の名前、気候、季節に関する名前などが使われます。細かく言うと掃海艇は島の名、補給艦は湖沼の名とか、決まってるそうです。個人的には護衛艦「はるかぜ」とか「ゆきかぜ」とか、風流で好きです。
最後になりましたが、今度は船から飛行機へ話が移ります。太平洋戦争最大のブランド、「零戦」ですが、なんでゼロがつくのでしょう。10式戦車や九七式艦上攻撃機があるから年号から取ったものと推測できます。ゼロなら1900年か、それは明治時代じゃん。はるか昔に零戦が出来たと思えません。実は当時の年号は皇紀を使っていたのです。昭和15年が皇紀2600年、だから「零式艦上戦闘機」として、世界的に有名になったのです。これが西暦から取っていたら、40式艦上戦闘機って、すでに名前で負けてるし。皇紀で読んだからこそ、零戦が出来たというのも、なんか皮肉ですね。

木村和久
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
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