東日本大震災から6年…被災地取材で記者が大手メディアの震災報道に抱いた違和感
東日本大震災から6年が経過した2017年3月11日土曜日は、全国各地で追悼式典が行われた。テレビ番組の震災関連特番の本数は昨年よりも少なくなったという報道もあったが、ネットニュースや新聞では震災の記憶を風化させないよう、被災者の今の声を伝える記事が目立った。
だが、実際に被災地を訪れた人や被災地に住む人にとっては、メディアが報じる被災地のトーンと眼前の風景との間に大きなギャップを感じていたかもしれない。
というのも、震災から6年が経過した今、震災の記憶が刻み込まれている風景の多くが被災地から失われているからだ。津波で被害のあった地域は、例えるならば「更地の工事現場」。今では被災状況を伝える建物はほとんど残っておらず、先週メディアが報じた被災地の「津波の爪痕」はその地域のほんの一部にすぎないのだ。
⇒【写真】はコチラ(被災地写真ルポ) https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1301381
そもそも、一口に「被災地」と言っても現地の状況は場所によって大きく異なる。東北地方という範囲が広いのは言うまでもないが、たとえば福島と宮城でも関心の領域が大きく違う。
震災以降、農業・漁業の復興が最大の関心となっている宮城や岩手に対して、福島は原発事故による放射能の風評被害や避難が解除された地域におけるコミュニティの崩壊が最大の関心事となっている。
また、同じ福島県内でも、福島第一原発から近い避難区域と、それ以外の地域では震災に対する関心や問題意識も大きく異なる。
東日本大震災の報道ラッシュが終わった今、現地の日常の様子から被災地の見えないリアルを紹介しよう。
⇒【写真】はコチラ(福島県富岡町の写真ルポ) https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1301382
原発事故の影響で多くの住民が避難している富岡町。幹線道路の国道6号線以外は主要道路を除いて立ち入りが禁止されているため、町内を自由に移動することができない。
田畑の広がる農道や民家に通じる道には原則としてすべて鉄柵が設けられ、立ち入ることはできず、避難先から戻ってきた人も出始めているものの、街は全体的に静寂に包まれている。
平日18時をすぎると、富岡町や浪江町を縦に貫く国道6号線は帰宅ラッシュに入る。一列にならぶ観光バスとハイエースが向かうのはここから南のいわき方面。
車の大半は福島第一原発で廃炉作業を行う作業員や出入り業者だ。ここは今の住民の割合から考えても、復興の街というよりも廃炉作業をしている人たちのための街と言える。
富岡町のコンビニエンスストアに入ると、軍手やネックウォーマーなど、現場作業をする人が購入するであろう商品のラインナップが充実しているのが町の状況を如実に表している。
津波で流されたJR常磐線富岡駅周辺は、3年ほど前までは倒壊した家屋や駅舎を見ることができたが、今はすべて更地になり、新たな駅舎を建設すべく急ピッチで工事が進められている。2017年末には再開予定で、すでに駅前のロータリーはほぼ完成しており、震災の記憶を目で見て確認することは極めて困難になっている。
つまり、富岡町は津波ではなく原発事故の影響を強く感じさせる風景が広がっていると言える。
いっぽう、市全体が再開発事業のように急激な復興を遂げているのが福島第一原発から40kmほど南にあるいわき市だ。
被災地は「工事現場」


福島県富岡町




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