更新日:2017年03月13日 21:00
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東日本大震災から6年…被災地取材で記者が大手メディアの震災報道に抱いた違和感

いわき市小名浜地区

⇒【写真】はコチラ(いわき市小名浜地区の写真ルポ) https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1301385  漁港のあるいわき市小名浜地区は、豊間地区以上に復興バブルに沸いている。津波被害にあった水族館「アクアマリンふくしま」の真向かいでは大型ショッピングモールの建設が進んでいる。周辺には新たな道路が敷かれ、ショッピングモールと水族館、観光客向けの物産館を結ぶデッキも整備され、エリア一帯が大規模な商業地になりつつある。  押し寄せた津波によって海水に浸されたはずのこの地だが、今ではその面影を感じさせる建物はほとんど残っていない。  だが、数少ない震災の記憶が残されている場所もあった。物産館の「いわき・ら・ら・ミュウ」。震災当時津波被害にあったこの施設では、震災を特集した展示が開かれていた。当時の避難所の様子を再現したブースは特に人気があり、当時の生々しい状況を感じ取ることができた。

「店で出される食材は必ずしも福島産とは限りません」

   震災以降、東北への関心が高まり観光客も増えている福島県浜通り地方だが、地元の方からは興味深い声を聞くことができる。 「よく誤解されることがあります。福島に来て『食べて応援!』と言っていろんな料理を食べられている方がいますが、店で出される食材は必ずしも福島産とは限りません。たとえば、いわき名物として出されるあんこう鍋のあんこうは青森のは大間産だし、刺身盛り合わせもマグロ、カツオ、タコ、メヒカリ…それぞれ産地が違います。特に刺身なんて中国など世界中から仕入れています。これは野菜も同様。もちろん、福島産の食材が放射能の安全基準値を上回っているからそうしているのではなく、お客さんにおいしい食材を提供したいからそうしてるんです」(いわき市湯本で飲食店を営む男性)  彼によると、そもそも震災前から店で出される食材は必ず福島産のものではなかったという。考えてみれば当たり前だ。たとえば、岡山の居酒屋で出される料理の食材がすべて岡山産である確率は低い。  だが、メディアは被災地で採れた食材のみを取り上げ「食べて応援!」と報道する。実際に被災地の居酒屋で出されるのは、東京の店と同様に、料理に合わせた様々な産地の食材。  そこには、東京の人の想像以上に、東京の人と同様の日常が流れている。一概に”不幸”のイメージを流布しがちなメディアに対し、被災地にいると報道と現実とのギャップを感じざるを得ない。その差異を確認するために、震災当時の風景がほとんど残っていない今こそ被災地を訪れてみるのもよいかもしれない。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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