誰でも簡単に行けちゃう「危険地帯」――丸山ゴンザレスがマジで身の危険を感じた場所
世界には「ヤバい」と言われる危険地帯がいくつかある。だが、“危険”の感じ方は人それぞれだ。本人の置かれた状況なども密接に関係してくる。旅行者として行くのか、それともジャーナリストや兵士として行くのか。単純に死傷者数などのデータで見れば当然、中南米やアフリカ、中東の紛争地などが“治安が悪い”ということになるだろう。では、旅行者が足を運べる範囲内でヤバい場所はどこなのだろうか。
旅番組『クレイジージャーニー』(TBSテレビ系)で話題なのが危険地帯ジャーナリスト、丸山ゴンザレス氏。新刊の著書に『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)があり、スラム街から麻薬や人身売買の現場まで、世界各国の危険地帯を訪れた経験を持つ。
そんなゴンザレス氏に、いままで訪れたなかで「ヤバい」と感じた場所を5つあげてもらった。
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「結論から言えば、僕がいちばんヤバいと思うのはネイチャー系なんですよ。大自然が絡むものは交渉がきかないので。運不運の要素がデカい。そういった意味では、ケニアのミギンゴ島ですね」
ミギンゴ島とは、アフリカ最大の湖であるビクトリア湖の真ん中に浮かぶスラム街の島。サッカー場4分の1程度の面積(約1800平方メートル)に漁師たちが集まり、約1000人近くが住んでいる。ほぼ岩だけの島内にバラックのような建物が所狭しと建てられ、雑貨屋や服屋、床屋、果ては売春宿を兼ねた飲み屋まで存在する。ゴンザレス氏は、ミギンゴ島で警察に拘束されるという事態にも陥ったが……。
「もちろん、島自体も衝撃だったのですが、それよりも往復の船がツラかった。帰り道で船のエンジンが故障してしまい、漂流するはめになった。そんなとき、向こう側から嵐が迫ってくるのが見えたんです。ケニアは標高が高く、気候変動によって年間約5000人が死んでいるとも言われていて。でも自然が相手なので、その怒りをぶつけることもできない……」
さらに、島民からは「船を狙った海賊が出る」と聞かされていた。カメラやある程度の現金を所持していたことから、とにかく精神的にも疲弊したそうだ。
「砂漠の朝日って本当にヤバいんですよ」
ゴンザレス氏が次にあげたのが、アラブ首長国連邦の首都アブダビ。豊富な石油資源によって、近年は目覚ましい発展を遂げている。もはや近代都市のイメージがあるアブダビだが、かつてトラブルに見舞われた経験があるのだという。
「まだ本格的に発展していく途上にあった15年ぐらい前の話です。夜中タクシーに乗ってホテルに行こうと思ったら、運転手から『おまえの宗教はなんだ?』と聞かれて。僕はムスリムではありませんし、そのときは『(日本人だから)無宗教に近いんだ』と答えた。すると『それはダメだ、いまからモスクに行ってムスリムになれ』と言われて。当然、断ったのですが、その場でタクシーから降ろされてしまって。時間帯も悪く、かなり外れの場所だったので、クルマも通っていない。朝日がのぼってきて、ジリジリと温度が上がっていくなか、水すらもっていなかった。これは死ぬなって(笑)」
街の様子は見えていたが、そこは砂漠である。ノドがカラカラに乾いた状態で途方に暮れた。太陽がのぼりきった頃に運良くクルマが通りかかり、なんとか事無きを得たそうだ。
「先日の話ですが、プノンペンの街を泥酔しながら歩いていたんですよ。暑いので、水みたいにガブガブお酒を飲んでしまって」
90年代までは政情が不安定で内戦がたびたび起こり、街には銃声が鳴り響いていた。だが、それはもう昔の話。いまでは多くの日本企業が進出し、アジアのなかでも急成長しつつあるカンボジアの首都プノンペン。バックパッカーだけではなく、普通の観光客でも気軽に訪れることができる。そんな街が「ヤバい」とは、果たしてどういうことなのか?
「昼間はどこも人通りが多いのですが、夜9時ぐらいを過ぎると、急にだれもいなくなるような場所が出てくる。フラフラと歩きながら嫌な感じがしていたのですが、よく見ると、人がいるような気配がある。普段なら次のクラブや盛り場などに向かうのですが、そのときは道を引き返した。翌日、現地在住の人に聞くと『その道は強盗だらけで危ない。現地の人でも歩かないよ』と言われた。しかも、たんなる強盗ではなく、一発で刺し殺すような頭のおかしい連中だとか」
もはや都会で、危ないというイメージは薄れつつあるプノンペン。だからこそ、旅慣れた人ほど油断してしまい、強盗やトラブルに遭う可能性が高くなるのだという。昼間に大通りを歩いているだけならまだしも、裏道に入れば、まだまだ危ない場所もあるのだとか。だが、ゴンザレス氏いわく「本当にヤバいのは強盗ではない」という。それ以上にヤバいものなどあるのか……!?
「カンボジアで外国人の医療費ってメッチャ高いらしいですよ(笑)」
2016年6月末、ゴンザレス氏はバングラデシュの海港都市チッタゴンを訪れた。世界中から大量の廃船が集められ、解体作業が行われる「船の墓場」。この作業には危険が伴い、死亡者も多い。そんな“世界一危険な仕事場”とも呼ばれる場所を取材するためだ。だが、取材の最中に首都ダッカでテロが起こり、緊急帰国を余儀なくされたのだった。
とはいえ、バングラデシュに滞在しているなかで、ゴンザレス氏がヤバいと感じたのは「人だかり」だという。外務省のデータによると、バングラデシュの国土面積は日本の約4割にも関わらず、人口は約1億6000万。人口密度がとても高い国だ。
「立ち止まったり、普通に写メを撮っているだけで人だかりができる。意外と排他的なところがあって、人口密度が高い割に、外国人というだけで非常に目立つんですよ。人が多いと、なにが起きるのかわからないというリスクがあります。行動が読めないので……。さらに、交通渋滞のひどさは世界最悪だとも言われており、とにかく移動が大変でした」
ケニア・ミギンゴ島「大自然は交渉がきかない」
アラブ首長国連邦・アブダビ「砂漠の朝日」
カンボジア・プノンペン「強盗だらけの裏通り」
バングラデシュ「人だかりのリスク」
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明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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