更新日:2022年10月05日 23:37
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中国でクローン人間が誕生する日も近い!? 倫理観を軽視した「国をあげての遺伝子研究」に危機感

中国富裕層にとってゲノム解析はオシャレ

 一方、中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は「国ぐるみの後押し」に危機感を持っている。 「国威発揚のため、中国政府はアメリカに追いつけるポテンシャルのある分野を選別して育成している。そのひとつがゲノミクスであり、クローン羊のドリーが誕生した’95年から高い関心を持っている。人口13億の中国は、世界一のサンプル数を集めることができ、個人情報保護の概念も希薄。生命倫理以外の点から見ても、欧米諸国が踏み込めない領域の研究ができるため、国家戦略として強力にバックアップしている」  そうした環境で成長を遂げたのが、いまや世界最大規模のゲノム解析企業といわれるBGIだ。最新DNAシーケンサーの保有台数は世界一で、日本を含む複数の海外にも拠点を構える。7月に深セン市場に上場し約80億円を調達して話題となった。同社は’15年、ゲノム編集によって色やサイズを自由にカスタマイズできるペット用のブタを販売したこともある。  人のゲノムを解析することにより、将来の病気リスクや職業の向き不向きまでがわかるといわれているが、一方では遺伝子上の優劣が詳らかにされれば、就職や結婚などにおける差別に繋がる可能性があるうえ、個人情報保護の観点からも慎重な声が根強い。ところが中国の国民性は、ゲノム解析ビジネスに寛容だという。 「エリート層に属する中国人の話を聞くと、ゲノム解析にとても前向きで、オシャレなものとして認識していましたし、率先してテクノロジーに献身しようという姿勢もある。一方、格差の末端にいる人たちは、個人情報の保護などには関心がなく、売り物になるなら売ってしまうという人がほとんど。ゲノム解析の研究はやりやすい環境にある」(中国のテクノロジー動向に詳しい川ノ上和文氏)  国と企業、人民が一体となった中国ゲノミクスの急伸は、人類の有史以来の転換期になる可能性がある。しかし、そこにルールや倫理観が欠如しているのなら、それは我々にとってクライシスの到来でしかない。 <遺伝子分野における用語解説> ・体細胞クローン 皮膚などの体細胞から核を取り出し、卵細胞に移植して作製されるクローン。動物では生後短期間での死亡率が高い ・ゲノム編集 生物のゲノム(全遺伝情報)を自由に改変する技術で、遺伝子組み換えよりも正確に遺伝子を操作できる ・染色体異常 人の細胞の核にある46本の染色体のうち、いずれかに異常がある状態で、流産やダウン症の原因になる ・着床前診断 体外受精した着床前の受精卵の健康状態を診断すること。日本では父母いずれかに遺伝性疾患がある場合のみ承認 ・DNAシーケンサー 遺伝情報であるDNAの塩基配列を自動的に読み取り、解析する配列解読装置のこと。1台数千万円と高価 写真/AFP=時事 ― 倫理なき「中国ハイテク技術」が地球を滅ぼす ―
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