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NHKでパンクとメタルがトークバトル! 対立を経て進化したジャパニーズメタル

パンクとメタルの違い

 では、パンクとメタルの違いとはどこにあるのだろうか。Hi-STANDARDのギタリスト横山健は、パンクは反政府で、メタルは反宗教的、反キリスト教的なものと分析している(『ヘドバン vol.7』)。  また、過去の歴史から考えると、パンク=プロレタリア、メタル=ブルジョアという図式が導かれる。とはいえ貧乏メタラーは少なくないわけだが……。たしかに、パンクは世の中の不条理さを歌詞にするなど、政治的思想に重きが置かれている。対してヘヴィメタルは、政治的・社会的なことをあまり扱わず、ドラゴンや神話、悪魔が登場する物語や、メタルへの信念など非日常的なテーマを題材にしており、歌詞よりも楽曲の方を重視している傾向がある。というわけで、パンクは歌詞・思想重視でリアル、メタルは楽曲重視でファンタジーという違いがあるといえるだろう。  ここ日本では、その違いにおける象徴的な具体例がある。パンク側は、『メシ食うな!』(1981年)でメジャー・デビューしたINU(イヌ)の町田町蔵であり、メタル側は、LOUDNESSの4thアルバム『DISILLUSION』(1984年)収録の「夢・FANTASY」だろう。  『メシ食うな!』収録の「メシ食うな!」は、「俺の存在を頭から否定してくれ/あのふざけた中産階級のガキ共をぶちのめす為に」というメッセージ性の強い歌詞である。ちなみに町田町蔵とは、のちの芥川賞作家、町田康である。  一方の「夢・FANTASY」は、日本を代表するヘヴィメタル・バンドのスピード・チューンにもかかわらず、曲名と歌詞が意味不明なポエムワールドで卒倒する。

町田町蔵(町田康)を中心に構成されたパンクロックバンドINUのアルバム『メシ食うな!』(1981年)

 そういえば北海道出身の正統派ヘヴィメタル・バンドFASTDRAWの3rdアルバム『弱虫毛虫』(1989年)には、「めし喰いたい」という楽曲があるが、これは「メシ食うな!」にインスパイアされて書かれた楽曲だったのだろうか……。FASTDRAWの歌詞は、その多くがヘヴィメタルらしからぬ世の中を皮肉った社会派テイストだった。  ここまで述べたとおり、パンクとメタルは外野から見れば違いがわかりにくいが、趣味として楽しんでいるパンクスおよびメタラーにとっては、大きく違うのである。

時代は対立からクロスオーヴァーへ

 だが対立の姿勢は、あまり建設的とは言えない。そもそもヘヴィメタルは、ハードロックにパンクの攻撃性を加えて生まれた音楽ジャンルである。そしてハードコア・パンクのギターサウンドは、ヘヴィメタルの影響を受けたものであり、スラッシュメタルは、ヘヴィメタルにハードコアの攻撃性を加えたもの。パンクとメタル、そしてその後に生まれたラウド系ミュージックは、ジャンルの垣根を乗り越えたクロスオーヴァーな関係にある。  正統派のパンクおよびメタルも楽しめるが、両方のエッセンスが内包されたバンドも楽しい。対立するよりも、互いの良いと思える部分を積極的に取り入れるほうが、豊かな音楽になりやすい。80年代末にメジャー・デビューしたX(X JAPAN)は、パンク、メタル、歌謡曲、クラシック、民族音楽などさまざまな音楽ジャンルをぶち込んでいるからこそ、音楽的に豊かで、刺激があった。だからこそ現在も親しまれ続けている。  さて、我らがBABYMETALの音楽も、さまざまな要素を取り込んでいる。メタル方面だけでも、メロスピ、V系、ヴァイキング、プログレなど、サブジャンルを横断しており、それは多くのリスナーに受け入れられ、高く評価されている。そして彼女らは、世界のトップ・アーティストにまで登り詰めたのだ。(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)
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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!





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