2017年は「働き方改革元年」と呼ばれ、「プレミアムフライデー」施策のスタート、さらにソフトバンクやDeNAなど大手企業による副業解禁が話題を集めた。しかし、そんななかで若手社員の新たな悩みや戸惑いの声も多く聞かれる。
今回は企業へのコンサルティングや研修を提供する株式会社アイマムの代表取締役社長、嶋谷光洋氏(55)と、学生時代、2つの国際協力団体で活動し、現在はアメージング出版(合同会社AmazingAdventure)を経営するなど、若者の労働環境をよく知る千葉慎也氏(30)に、
今時の若手社員の悩みや、上司が取るべき対応について語り合ってもらった。
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千葉慎也(以下、千葉):では早速、若手社員の悩みを見ていきましょうか。
「それでも残業禁止に従うべきですか?」(Aさん・26歳)
「昨今の働き方改革で、勤務先も毎週水曜は夜6時の残業が禁止されました。それはそれで良いのですが、手取りのほとんどは残業代だったので、生活苦に陥りそうです。周りからも『働き方改革なんていらない…』と恨み節が聞こえますが、それでも残業禁止に従うべきでしょうか?」(放送・制作・男性)
千葉:働き盛りで、もっと働いて稼ぎたいのに残業が許されず、基本給も安いため生活が苦しくなってしまっているという。
嶋谷光洋(以下、嶋谷):これは上司があまりにも説明不足だと思いますね。「なぜ残業禁止になったのか」というところを部下に明確に伝えた上で、もっと対話をするべきです。
アメージング出版代表、千葉慎也氏
千葉:ただ単に「働き方改革だから」「上が言っているから」という理由で残業禁止を押し付けられても、部下としてはもやもやとしたものが残りますよね。
嶋谷:それに残業をなくしたことで、それまでにしていた残業がもしも本当に必要な残業であったとしたら、当然、売り上げも落ちますよね。「明日から残業なしだけど、売上はキープで」って、そんなのは無理な話。
「売上が20%落ちるが、1年間、残業は我慢しよう。その替わり1年かけて元の業績に戻せるやり方を一緒に考えていこうよ」というのが上司のあり方だと思います。
千葉:上司は部下に対して、しっかりとした説明をすべきだと。あとは基本給だけで生活できないというのも、問題ですよね。
嶋谷:そのあたりもコミュニケーション不足で上司に伝わっていないのではと思います。部下も部下で、会社にとって必要な残業であるならば、「仕事の品質を上げるために、こんな理由で残業が必要なんです」と上司に伝える勇気を持ってほしいですね。
1分とか短時間でいいので気軽に「残業せずにできそう?」とか声をかける普段の何気ない会話が新しいやり方を生みだす土台だと思います。
「私の中の『働き方改革』は正しいですか?」(Bさん・25歳)
「ベンチャー企業なので、とにかく残業することが当たり前に良しとされていて、ずっとその風習に従ってきました。ただ、その生活に限界も感じていて、今は『やるべきことが終わったらなんとしてでも帰る!』と、自分の中で働き方の方針を変えました」(ITサービス・制作・女性)
嶋谷:自分の心身の健康を守るために働き方の方針を変えて実行しているというのは、素晴らしい行動力!
株式会社アイマムの代表取締役社長、嶋谷光洋氏
千葉:特に残業が当たり前とされているようなベンチャーではとても勇気のいることだったんじゃないかな。
嶋谷:この方には、ぜひもう一踏ん張りしていただきたい。同僚にあなたと同じ気持ちを持って働いているが、上司が怖くてあなたのように実行できないという方はいませんでしょうか。
もし周りと話ができる状況なら、本音を聞き出してみてほしいですね。慎重に動く必要があると思いますが、会社のそういった風土を変えていきたいのであれば、仲間と協力して会社に対してはっきりと意思表示をするべきだと思います。
千葉:今のままでは会社に居づらくなってしまいそうですからね。頑張ってもらいたいです。