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銀座で成り上がりたかったらお客様にしてはいけないこと――銀座最年少ママ桐島とうかの「漆黒革の手帖」

看板 皆様お久しぶりです。前回の記事を書いた後、色々と考えてしまったことがあり、暫くお休みをさせて頂いておりました。この期間に起こった出来事、私が悩んでいたことも時間をおいて、またこの連載に載せていけたらなと、思っております。ですのでこの記事からは、より私らしい文章を読んでいただきたいと思い、私らしい文体で書かせて頂きます。今回は、銀座に来たばかりの、私の未熟な頃の出来事です。

銀座で初めて働いたクラブでの思い出

 私は1度お名刺を頂いたら、再来店がなくても絶対に1か月に1度はメールをすると決めている。その日はあるお客様が、1年以上ぶりに再来店してくださった。私は久しぶりの来店をとっても楽しみにしていたのに、彼はお店に来るなり、大きな声で安くしてほしいと値切り出してきた。 「ちゃんと来たんだから、絶対安くしてよ」  当然、私は当時のママにどうしてこんなお客様を呼ぶのと怒られた。「お店の為に頑張っているのに、ママは何にもわかってない」と、凄く悔しくて、絶対にこの人にもっとお金を落としてもらおうと思い、その方への営業メールを続けた。次に来てくださったのは2度目の来店から3か月後。そこから彼は3か月に1度のペースで来店するようになるが、ボトルがなくなってしまいそうになると、 「今日はお金ないよ。次、入れるから」  と言って帰ってしまう。とても銀座での会話とは思えない。私も少し恥ずかしかったし、今日もママに怒られてしまうかもしれないという不安と、腹立ちを表に出してしまったこともあった。  しかし、それからしばらくして、急に彼の来店頻度が増えた。多い時は週4日、来店してくださった。私は、何も考えず、当たり前のように毎日の来店を催促し、より高いお酒をねだった。キープボトルのランクが上がり、1日で2本のウイスキーをおろしたり、何日かに1度はシャンパンまで下ろしてくださる様になった。  私はもちろん、自分の営業の成果で、お金を使わないお客様が、お金を使うお客様になったと思った。それでもママは褒めてはくれず、「○○さんには営業しなくていい」と言ってきた。それに対して怒り狂い、泣き出してしまったことも何度もあった。ママは私の努力は認めてくれないんだって。  当時の私にはママが理解できなかった。どんなお客様にでも徹底的に営業活動をする私が正しいと思ってしまっていた。大学生のアルバイトだった私には、お客様に無理をさせているという自覚が全くなかった。でも、今はわかる。当時の私はお客様に無理をさせていた。  それに気がつけたのは、急に彼が来なくなったからである。彼は何も言わずにお店にいらっしゃらなくなった。そして、後にわかったことが、彼は売掛で飲む様になっていて、その売掛金の入金が無かったのだ。私は彼に無理をさせてしまい、更にお店にまで迷惑をかけてしまっていた。
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余裕のあるお客様に余裕のある飲み方
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