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金髪に派手な化粧の田舎っぽい女の子から銀座最年少ママに――桐島とうかが綴るエピソード「漆黒革の手帖」

 お初にお目にかかります。桐島とうかと申します。

 学習院大学経済学部を卒業後、アルバイトとして働いていた銀座のクラブでの仕事を本業にし、現在は最年少ママとして働いております。

「どうしてそんなに若くしてママになれたの?」

 とよく質問して頂きますが、ただの生意気な小娘の私に、お客様が多い理由はなんだと思いますか?その答えとして、1人のお客様のエピソードを交えてお話させてください。

 4年程前でしょうか、有名企業の子会社で働くA様に出会いました。当時の私は銀座で働き始めたばかりで、A様はママのお客様のご紹介でご来店された方でした。

 当時の私の見た目は銀座のクラブにはふさわしくない、金髪に派手な化粧、そして垢抜けないドレス。街でよく見かける田舎っぽい女の子でした。ただ、仕事に関して言えば自分でもかなり生真面目なほうだったと思います。毎日三社の新聞を隅々まで読み、週刊誌にも目を通し、毎日の株価に加え、ドル円相場まで把握しておりました。

 そんな見た目と中身が全く違う私が可笑しかったのか、A様は私を気に入ってくださり、毎週のようにお店に沢山のお客様を連れて来店してくださるようになりました。

 生意気だった私の失敗をお客様であるはずのA様が私の代わりにママに謝ってくださった事もありました。

 しかし、1年半ほど経った頃、A様をお店で見かけなくなってしまいました。連絡すら取れない状態が続き、初めての事態に心配していたとき、1通のメールが届きました。

「お店には中々伺えなくなります。貴方のおかげです。本当にありがとう。」

 私は後に新聞の人事異動の面で、A様が本社の社長になられた事を知りました。

 その後、A様は一度もお店にいらしてくれなくなってしまいました。私はお忙しいA様の状況を何も把握せず、彼にプレッシャーをかけてしまうメールを散々送っていました。しかしまた半年ほど過ぎた頃、私が全く面識のないA様の会社の方々が次々に来店してくださったのです。

「Aさんが貴方のところに行けと言うからお店使わせて貰うよ~」
「Aさんが貴方と飲むと出世すると言っていたよ~」

 A様は自分の部下はもちろん、取引先の幾多の会社の方々にも私の事を話してくださったらしく、冗談まじりに私の事を百福の女神として紹介してくださったそうです。その時はA様に対する申し訳なさと感謝の気持ちで胸が溢れそうでした。

 A様が出世されたのは自らのお力によるものですが、幸運な事に私はそういった素晴らしいお客様のいい時に出会えたお蔭で、より多くのお客様に贔屓にしていただけるようになりました。それから私は、

「とにかく明るく振る舞い、少しでもお客様の気持ちを明るくしよう。真摯に話を聞き、時には助言をし、お客様の向上心を支えよう」

 これを意識して毎日出勤するようになりました。そのおかげで、ただの生意気な小娘が銀座の街で働き続けられているのだと思います。

 普段はこんな堅苦しい話は致しません。

「私は福の神ですから明日はきっと良いことありますよ♡」

 これが、最近私がよくお客様にお伝えしている言葉です。

 少し長くなってしまいましたね。ここからは私の話ではなく、私が黒よりもっと黒い、漆黒の革の手帖に綴ったお客様のお話をさせて頂こうと思います。

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銀座で受験勉強するお客さん?

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