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『翔んで埼玉』だけじゃない!“ご当地自虐系”マンガは群馬、静岡、栃木にも

『ススメ! 栃木部』:3人の高校生が栃木で繰り広げるドタバタ物語

 一葵さやかさんによる『ススメ! 栃木部』は、「生まれも育ちも栃木県」という作者が、非常に地味で目立たず、忘れられがちな栃木県を舞台として、栃木愛全開で描く当地コメディマンガだ。  地元を愛する日光ゆば屋の娘・中禅寺晃と、宇都宮餃子屋の自称看板娘・堤咲喜は、栃木県が都道府県魅力度ランキングの上位に入らないことに悩んでいた。そこで彼女たちは、栃木県の魅力を向上させるべく「栃木県魅力向上部」、略して「栃木部」を発足することに。  そこに強引に巻き込まれたのが、東京から転校してきた男子高校生・宮本真都。3人が織りなす汗と涙にまみれた(?)ドタバタストーリーと、豊富に散りばめられた栃木ネタが、本作の大きな魅力となっている。
栃木部

「栃木部」の三人が繰り広げるドタバタ劇が魅力の『ススメ! 栃木部』。”萌え”を感じさせる絵柄も印象的(『ススメ! 栃木部 1』KADOKAWA/エンターブレイン)

『ローカル女子の遠吠え』:アラサー女子の静岡暮らしを描いた良作

 東京になじめず、実家のある静岡にUターンしたアラサー女子・有野りん子を主人公としたマンガが、瀬戸口みづきさん著『ローカル女子の遠吠え』だ。静岡県民や首都圏で暮らしている人にはもちろん、地方と都心の両方で生活したことのある人には、より刺さる内容となっている。  地元へ戻り再就職したりん子の日常を、4コマで描いていく本作。東京本社から出向してきた男や、地元を離れたことがないという同僚の女、ブラック企業に勤めていた同級生などに囲まれ、東京と静岡の違いに戸惑う主人公の、複雑な心の内を表現した良作となっている。
ローカル女子の遠吠え

『ローカル女子の遠吠え』には、アラサー女子の地方暮らしを丁寧に描くだけではなく、静岡住民が喜ぶ地元あるあるもたっぷり差し込まれている(『ローカル女子の遠吠え (1)』芳文社)

『埼玉最強伝説』:ホラーマンガ家によって描かれるダークな埼玉

『埼玉最強伝説』は、『不気田くん』や『不思議のたたりちゃん』で知られる伝説のホラーマンガ家・犬木加奈子さんが描いたダークエッセイマンガだ。 「埼玉は東京のダークサイド」と、マンガ内で真面目に語る本作は、「埼玉県女子の胸は日本一小さい」という総務省調べのデータなどを用いながら、ホラーテイストで埼玉県を自虐りまくる内容となっている。  しかしながら、埼玉県在住である作者の埼玉愛は本物。あふれる埼玉への思いが随所に感じられる本作を読めば、埼玉県を好きになること請け合いだ。埼玉県を知らない人にこそ読んでほしいマンガだといえよう。
埼玉最強伝説

ホラーマンガ家のエッセイである『埼玉最強伝説』は、埼玉県に何十年と住んでいる人でも知らないようなトリビアにあふれたマンガである(『埼玉最強伝説』笠倉出版社)

 ――意外と多い、ある地域に特化したマンガたち。作風は違うが、どれも地域に対する愛に溢れた良作なのは間違いないので、ぜひ一度手に取って、読んでみていただきたい。<文/後藤拓也(A4studio)>
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