英語力は不要になる? AI翻訳機の進化を追ってみた
日本を訪れる外国人観光客は、増加の一途である。23区を少し歩いても、外国人の姿が非常に多い。時折英語で話しかけられることもあるくらいだが、残念ながら日本の公用語は日本語のみである。中学高校と英語を勉強してきたはずなのに、まったくしゃべれないという人が大半ではないか。
そういう時に役立つのが、翻訳機である。最近では双方の会話を認識し、それを翻訳するガジェットが家電量販店でも販売されている。だが、そんなものが本当に役に立つのか? 結論を言えば、大いに役に立つ。
現在売られている翻訳機の大半が、AI(人工知能)と連携した製品である。
AIとは、別に世界のどこかに巨大なスーパーコンピューターがあるというわけではなく、あくまでもオンライン上のプログラムである。だがこのプログラムは、新しい知識を吸収するように設計されている。
ひとつ例を挙げよう。ここ最近、家電量販店でも見かけるようになった『ポケトーク』もAI翻訳機である。74の言語に対応する。その74言語のラインナップがなかなか面白い。
たとえばスペインという国は、実は多言語国家である。スペイン語の他にもバスク語やカタルーニャ語が使われているのだが、ポケトークはそのバスク語にもカタルーニャ語にも対応できる。
スペインは世界有数のサッカー強国で、国内にFCバルセロナとレアル・マドリードという名門クラブを抱えている。だがこの2チームは国籍こそ同じだが、それぞれ異なる言語圏に属している。バルセロナはカタルーニャ語圏の都市である。
日本のサッカーファンがバルセロナで現地サポーターと仲良くなりたいのなら、スペイン語よりもカタルーニャ語で話しかけるべき。レアル・マドリードとの一戦(エル・クラシコ)でバルサ側の座席に座っている場合は尚更だ。
また、同じスペイン語でもスペインで使われている言葉と中南米で使われている言葉には差異がある。ポケトークの場合はスペイン、アメリカ、コロンビア、アルゼンチンでそれぞれ使われているスペイン語に対応している。
このように、様々な地域言語や訛りも翻訳できるのはAIがあればこそ。
そしてAI翻訳機は、新しい単語を覚えることができるという性質も持っている。再び例を挙げるとすると、インドネシア語である。このインドネシア語という言語は、頻繁に新造語が登場することで知られている。その上、近年では英単語の影響も強く受けているが、政府当局はマスコミ各社に対して「極力インドネシア単語を使うように」と通達しているため、人によって単語が違うということがよくある。
インドネシア語で「発電所」は「pembangkit listrik」だが、多くのインドネシア人はこれを「power plant」と呼称する。また、インドネシア人は子音で略すのが大好きな人々。ユスフ・カラ(Jusuf Kalla)副大統領が「JK」、スシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)前大統領が「SBY」と呼ばれているように、インドネシア語を知らない人から見たら「何じゃこりゃ!?」というような略語がたくさん存在する。
だがAIの力を使えば、それすらも簡単に翻訳してしまうのだ。
少数民族の言語にも対応
新語を覚える翻訳機
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