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「ヒドすぎる職質」が急増中。主婦にも容赦なし、ポケモンGOの最中にも…

 いったい、何が起きているのか。警視庁管内の各署で開かれる警察署協議会の最新の議事録をチェックしたところ、複数の署で「職務質問の強化」が謳われていた。しかし、警視庁広報課に問い合わせたところ、なぜか「(中野署の一件が係争中につき、職質が増えているかどうかの部分も含め)回答を差し控えたい」と何も教えてくれなかった。 職質 警視庁の現役警察官は匿名を条件にこう話す。 「警視庁管内で職質を増やしているというのは事実です。ここ数か月で言えば、改元とトランプ訪日という大イベントが続いたこともある。ただ、最も大きい要因は東京五輪でしょうね。五輪までまだ1年以上ありますが、現場の警察官の職質技能の向上のため、実践経験を積ませる目的で特に湾岸エリアなどでは職質を励行していると聞いています」  つまり、市民を使って職質の練習をしているということなのか。  強引な職質が横行する原因について、「ノルマ」の存在を指摘するのは警察の事情に詳しいジャーナリストの寺澤有氏だ。 「警視庁では年に数回、職質を強化するキャンペーンが行われますが、そのたびにノルマが設定される。ノルマ未達成だと、まず有給休暇が取りにくくなり、未達状態が続くと出世にも大きく響いて、果ては給与にも影響する。そうした状況を避けたい現場の警察官のなかには、おとなしく従いそうな人やイチャモンをつけやすい若者を狙って職質をしようという動機が生まれる。  たとえ、無辜の市民に濡れ衣を着せている可能性があるとしても、自分の生活が大切ですからね。中野の工事業者の一件と類似したケースでは、木箱に入れた包丁を持って研ぎ師のところに行く途中に職質に遭い、銃刀法違反で捕まった杉並区内の居酒屋の板前さんもいました」

職質を端緒に露見した犯罪は約4万件も

 警察組織のブラック体質が、歪んだ職質を生んでいるということか。一方で、防犯コンサルタントの吉川祐二氏は警察OBとしてこう理解を呼びかける。 「犯罪の発見や検挙のきっかけを掴むうえで、職質の効率は突出して高く、警察官の最大の武器と言ってもいい。一方で、警察もさまざまな批判があるのは重々承知しており、組織としては最大限の注意を払って行うよう、現場の警察官に指導しているそうです」  事実、職質の有効性を示すデータもある。’17年度の「警察庁統計」によると、全国の刑法犯総数31.6万件のうち、職質が端緒となったものは約4万件と、およそ8分の1を占めているのだ。さらにいまだ猛威を振るう特殊詐欺に関しても、職質がきっかけで摘発にいたるケースが増えており、昨年はそうした事例が前年の3倍超に達したという。犯人検挙に効果があることも確かなのだ。
職質

東京五輪に向けた盛り場対策として、3月末に新宿・歌舞伎町で行われた合同パトロール

 治安向上は市民共通の願いだが、現場の警察官には気持ちよく職質に協力できるような体制を整えてもらいたいものだ。 ※週刊SPA!5/28日発売号「「ヒドい職質」が急増中」特集より <取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 写真/AFP=時事>
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週刊SPA!6/4号(5/28発売)

表紙の人/ 吉岡里帆

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