更新日:2022年03月07日 15:27
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プーチンの目的は失われたソ連時代の版図を奪還することだ/倉山満

世にも恥ずかしい「ロシア経済分野協力担当大臣」など廃止してしまえ!

言論ストロングスタイル

首相官邸ホームページでは、「岸田内閣 閣僚名簿」でしっかりと「ロシア経済分野協力担当」の文字を確認することができる。そして、岸田首相はこの文字を消さないと明言した(2月25日国会答弁より)

 敵国が侵入、国の方々で火の手があがった。情報は錯綜している。戦いの初動においては、当たり前の状況だ。特に、侵攻する側が用意周到に準備している場合には。という状況で原稿を書いている。言うまでもなく、ロシアのウクライナ侵攻の話だ。日本にとっては対岸の火事だが、対岸の火事で済んでいる間に対策を講じねば、明日は我が身だ。ならば、どうする?  最も簡単で、岸田文雄首相がその気になれば、1時間で実行可能な方策がある。「ロシア経済分野協力担当大臣」の廃止だ。本来ならば、この原稿が届く頃には実行完了しておかねばならない話だ。世にも恥ずかしい「ロシア経済分野協力担当大臣」など廃止してしまえ! その程度のことができずに、他に何ができる?

周辺諸国の靴の裏を舐め続けた安倍外交の象徴

 ’16年、安倍晋三内閣で設置され、世耕弘成初代大臣以降、経済産業大臣が兼任するのが通例で今に至っている。要するに、ウラジミール・プーチンに経済協力をチラつかせれば、北方領土の一つや二つ返してもらえないかと淡すぎる期待を抱いた安倍内閣が設置した大臣だ。大臣の名前に友好国ですらない外国の名前をいれるなど、恥ずかしいことこの上ない。すべての周辺諸国の靴の裏を舐め続けながら世渡り上手を気取った、安倍外交の象徴だ。  岸田内閣は米欧と協調、即座に対露経済制裁を発動したと胸を張るが、「ロシア経済分野協力担当大臣」をそのままにしていたら本気を疑われるだろう。もっとも、日本人はこんな恥ずかしい大臣がいることなど知らないだろうし、ロシア人で知っている人間などもっといないだろう。

プーチンの目的は失われたソ連時代の版図を奪還

 百歩譲って、この大臣を廃止できないとする。仮にロシアが圧力をかけてきたら完全な内政干渉だ。ロシアに何か言われても、「実務は経済産業大臣が行う」と伝えておけばいい。  だいたい安倍内閣は、なぜプーチンと領土交渉などしたのか。北方四島中一島も返ってこないどころか、過去に積み上げた成果も台無しに、勝ち取った言質すらも否定された。挙句の果てに、ロシアは憲法改正で「領土割譲の禁止」すら制定した。今やロシア国内で日本の北方領土を返せと議論する空気など皆無だと聞く。それはそのはずだ。プーチンは、失われたソ連時代の版図を奪還する気満々なのだ。たかがゼニカネの話で、太平洋への出口であり、核ミサイルを設置するカムチャツカ半島の「門」の位置にある、地政学的な要衝の北方領土を返してくるなどありえない。  なぜ安倍内閣がプーチンと交渉しようと考えたのか正気を疑うが、岸田政権は過去の過ちと決別すべきだろう。一刻も早く「ロシア経済分野協力担当大臣」を廃止せよ!
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国際社会では、いまだ米中に次ぐ世界第三位の大国はロシア
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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