更新日:2022年03月07日 15:27
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プーチンの目的は失われたソ連時代の版図を奪還することだ/倉山満

国際社会では、いまだ米中に次ぐ世界第三位の大国はロシア

 そもそも日本人は、最近は米欧も、プーチンとロシアを見誤っているのではないか。明々白々な誤謬が、「日本が大国で、ロシアが小国だ」との認識だ。理由は、日本は世界三位の経済大国、ロシアは韓国と同レベルのGDPしかない、ということらしい。いつから経済が大国の指標となったのか。少なくとも経済は、大国の指標の一つにすぎないはずだ。もし経済だけが大国の指標ならば、スイスやルクセンブルクを大国扱いする国が無いのはどうしたことか。  さらに言うなれば、軍事力無き経済大国など、カツアゲの対象にすぎない。国際社会の冷厳な現実は、ロシアはいまだに米中に次ぐ世界第三位の大国であり、ヨーロッパ諸国が束になってかかっても構わない。一方で日本は、国名ではなく、地名として存在するだけだ。

大国とは、自分の運命を自分で決められる国

 大国とは、「その国の言うことを聞かねば国際秩序が成立しない国」のことである。言い換えれば、自分の運命を自分で決められる国のことである。それを裏付ける力とは、突き詰めれば軍事力である。だから、多くの国々が核兵器を持とうとする。特にロシアは冷戦敗北とソ連崩壊、そして’90年代のバルカン紛争で受けた屈辱を跳ね返したいと臥薪嘗胆、そうしたロシア人の願望がプーチンを独裁者に押し上げた。  皆が忘れているが、政権獲得後のプーチンは連戦連勝である。ソ連崩壊後に腐敗を極めた財閥(オリガルヒ)を粛清、自分に忠誠を誓う政商だけを生き残らせた。その筆頭がガスプロムである。プーチンはガスプロムの“企業舎兄”であり、この会社の最大顧客は中国である。プーチンは徹底したリアリストなので、自分より強い相手には徹底的に媚びへつらう。だから、中国には徹底して低姿勢だ。逆に、自分より弱い者は歯牙にもかけないし、反抗すれば徹底的に叩きのめす。政権獲得の景気づけに叩きのめされたのが、チェチェン人だ。前世紀は徹底的に反抗したチェチェン人も、プーチンの弾圧の前に沈黙した。
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プーチンは自分より強い米中二国しか見ていない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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