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沖縄のコロナ感染爆発の背景にある在日米軍の暴虐<沖縄タイムス記者 阿部 岳>

日米地位協定が珍しく議論された背景

―― 普段、日本のメディアがアメリカを批判することはほとんどありません。しかし今回は、在日米軍が日本の検疫を免除されたのは日米地位協定のせいだとして、多くのメディアが地位協定の問題点を指摘しています。ここまで全国的に地位協定が話題になるのは珍しいと思います。 阿部 在日米軍基地のクラスターは、沖縄県だけでなく、全国の米軍基地で確認されています。いち早くまん防が適用されたのは沖縄県と山口県、広島県でしたが、山口県にも米軍基地があり、広島県は山口県に隣接しています。こうした背景から、地位協定が日本全体の問題と受け止められたのだと思います。  多くの人たちが地位協定に関心を持つことは歓迎すべきことです。しかし、仮に米軍基地のクラスターが沖縄でしか起こらなかったとしたら、ここまで地位協定が問題視されたかどうかは疑問です。  沖縄は1995年に米兵3人による暴行事件が起こって以来、一貫して地位協定の改定を訴えてきました。近年では全国知事会が地位協定の抜本的な見直しを提言するといった動きも見られますが、まだまだ全国的に問題意識が共有されているとは言えません。沖縄がどれほど必死になって声をあげても、思想やイデオロギーの問題と見られてしまうというのが実情だと思います。  しかし、沖縄が地位協定の改定を求めているのは、米軍の事件や事故、騒音などによって実際に被害を受けているからであって、思想信条とは関係ありません。コロナの感染と同じように、米軍基地が県民の生命や健康、財産を脅かす存在だからこそ、強く反対しているのです。  米軍基地や地位協定の問題点を指摘すると、「中国に攻められるよりはマシだろう」などと言われることがあります。この手の人たちは直接米軍の被害を受けた経験がないのだと思います。だからこんな軽口を叩けるのでしょう。  もっとも、米軍による被害を理解できないという点では、日本に住む大多数の人たちも同様です。こういう人たちによって米軍基地や日米地位協定は支えられ、沖縄は犠牲を強いられてきたのです。  これは私自身にも言えることです。私は沖縄で新聞記者をしていますが、東京出身であり、沖縄に基地を押しつけてきた人間の1人です。私も含めて日本人1人ひとりが沖縄に犠牲を強いていることを自覚しなければ、今後も同じことが繰り返されてしまうと思います。

名護市民を批判する資格はあるか

―― 今年は沖縄の日本復帰50年という節目の年です。私たちは改めて沖縄の米軍基地のあり方を考えなければなりません。いま名護市では辺野古新基地建設が進んでいますが、先日行われた名護市長選挙の結果をどう見ていますか。 阿部 今回の名護市長選挙は、自民党と公明党が推薦する現職の渡具知武豊氏と、野党の支援する岸本洋平氏の一騎打ちとなりました。渡具知氏は新基地に賛成とも反対とも言わず、争点化を避け、岸本氏は基地反対を掲げて戦った結果、渡具知氏が5000票差というかなりの差をつけて勝利しました。  しかし、4年前の名護市長選挙もそうでしたが、この選挙を単純に「基地賛成派」対「基地反対派」と見るべきではありません。  この間、名護市民は何度も何度も基地反対の意思を示してきました。1997年の市民投票では5割以上の人たちが基地建設に反対し、2019年の県民投票では7割以上の人たちが反対しました。反対の意思はどんどん強固になっています。  日本が本当に民主主義国家であれば、市民の意思を尊重し、基地建設は中止になるはずです。ところが日本政府はこの結果を一切顧みることなく、基地建設を強行してきました。何を言っても自分たちの意思が通らないのなら、せめて暮らしの改善を願う。そのように判断した市民がいたとしても不思議ではありません。  名護市長選挙の結果を受けて、沖縄の外に住んでいる人たちの中には、「名護市民は基地を容認したのか」、「名護市民には失望した」などと言っている人たちもいます。どの口が言っているのか。名護市民が選挙のたびに基地建設の是非を問われなければならないのは、ひとえに日本政府が基地建設を強行しているからであり、その政府を大多数の日本人が支えているからです。  繰り返し強調しておきますが、沖縄に基地を押しつけているのは日本です。沖縄の基地問題は沖縄の問題ではなく、日本の問題です。これは日本が解決すべき問題なのです。当事者は日本です。日本で暮らしている人たちには、そのことをしっかりと認識してもらいたいと思います。 (2月1日 聞き手・構成 中村友哉) あべ・たかし●沖縄タイムス記者。1974年東京都生まれ。辺野古新基地建設を巡る名護市民投票があった97年入社。政経部、社会部、整理部、辺野古や高江をカバーする北部報道部を経て編集委員。著書「ルポ沖縄 国家の暴力―現場記者が見た『高江165日』の真実」(朝日新聞出版)は、日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞を受賞。
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2022年3月号

【特集1】属国日本の悲劇 米軍発の感染爆発
【特集2】〝認諾〟で真相を闇に葬った岸田政権
【特集3】東アジア不戦推進プロジェクト

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