ニュース

宣戦布告がないのに、軍事衝突はある。これは紛争か、戦争か/倉山満

実質は参戦国。建前は中立国

 だから、ウクライナにとっても支援する米欧にとっても、「戦争」は都合が悪い。  米英主導のNATOは、同盟国でもないウクライナの為にロシアと世界大戦を行う気はない。同時に、プーチンの増長も許す気はない。だから、他のすべての支援は惜しまないが、「表立ってウクライナと一緒に武器を持って戦う」だけはやらない。ウクライナの善戦は陰で米英が軍事支援をしている(たとえば、ゼレンスキー大統領の身辺警護はイギリスの最精鋭特殊部隊が行っている、など)ので実質は参戦国と見るのが常識だが、建前は中立国だ。  ロシアもそれは心得ていて、ウクライナ一国で苦戦しているのにNATOを呼び込む気はないので、「それ以上やったら中立違反だぞ」と警告している。

外交戦で及び腰なのはドイツとフランス

 この外交戦で及び腰なのがドイツとフランスだ。経済制裁にも、仏独は米英と比べ慎重だった。だからゼレンスキーは米英には満腔の感謝を示し、仏独では嫌みを交えつつ激烈な要求を繰り返した。日本でのオンライン演説は中間よりも米英寄りで、ご丁寧に「アジアのリーダーとしてロシアを制裁してくれてありがとう」とまで言って感謝してくれた。  さて、これをプーチンが聞いたら、どう思う? 日本は、形式上は中立だが、既にウクライナの味方をしているのだ。覚悟すべし。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

噓だらけの日本古代史噓だらけの日本古代史

ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作は、日本の神話から平安時代までの嘘を暴く!

1
2
3
おすすめ記事