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日本国憲法に「誤植」が放置されている理由とは?

倉山満 本日、5月3日は「憲法記念日」。言うまでもなく、1947年に日本国憲法が施行された日である。 「平和」「人権」「民主主義」を謳った正しく美しい憲法というイメージを、日本国憲法に対して抱いている人は少なくないだろう。昨年、その全文を掲載した『日本国憲法』(小学館)が約20年ぶりに改版され、コンビニを中心にベストセラーになったのは記憶に新しい。Amazonのレビューにも「美しい前文に涙しました」などの賛辞が並ぶが……。 「とんでもない! 日本国憲法の前文ほど、ゴミみたいにひどい日本語はありませんよ」  真っ向からこき下ろすのは、憲政史家の倉山氏。 「ためしに音読してみてください。読みにくいことこのうえなく、リズムも絶望的に悪い。美的センス皆無です。とくにひどいのが、『われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、~~と信ずる』という第三段落。いったい『~~』の中にいくつ主語があるんでしょうか。『SPA!』のライターがこんな文章を書いたら即、クビですね!」  日本国憲法の前文が日本語として読みにくいのも道理で、なんとなれば「英語の原文をほぼ直訳しただけ」のものなのである。問題の第三段落も、英語で読めば格段にわかりやすくなるのだ。  このへたくそな文章は、当時の日本政府が後世に残した“暗号”だ――と倉山氏は見立てる。 「マッカーサーから大日本帝国憲法の改正を示唆され、政府は後に『松本案』(憲法担当大臣・松本烝治法学博士が審議を担当)と呼ばれる改正案を提出します。ですが、その内容は、日本の国家体制を破壊し、自立を許さず、永遠に敗戦国として飼い慣らそうと目論むアメリカにとって満足のいくものではなかった。そこで、マッカーサーはオリジナルの憲法草案をたったの1週間で作成するのです。この『マッカーサーノート』と呼ばれるラクガキこそが、今日の日本国憲法の原案。当然、日本政府も抵抗するのですが、最終的には占領軍の圧力に屈して受け入れざるを得なかった。当時の新憲法審議の記録には、前文を『あえて直訳調にする』と決定する過程がハッキリ残っていますが、その心は『この憲法は日本人の手によるものではなく、アメリカ人が押し付けてきたので、日本人は嫌々受け入れているのだ』という本音にあるのです」  日本国憲法の中身のおそまつさは、過去記事日本国憲法はデタラメ(https://nikkan-spa.jp/630898)に詳しい。そんな憲法をありがたがるのもバカげた話だが、いつしか日本国民には、日本国憲法が最高の法であるかのような刷り込みが浸透していった。今や、日本国憲法を一言一句であれ変更することは戦後民主主義への冒涜である――と主張する強固な「護憲派」も少なくない。だが、そんな日本国憲法に「誤植」があることは、あまり知られていないだろう。 「天皇の国事行為について規定した〈第七条第四号〉に、次のようなくだりがあります。『議員の総選挙の施行を公示すること』。ですが、参議院選挙のときに衆議院総選挙が重なっても、参議院の半分は非改選ですから『国会議員の総選挙』はあり得ません。『総』の一文字は誤植なのです」  日本国憲法の審議を担当したのは、当時の法律のプロたちであり、条文に誤植などないよう目を光らせるのが仕事である。そんな彼らが誤植を見逃した……という事実をどう見るべきか。 「誤植にかこつけて、いずれ憲法を改正しようとしていた……あるいはもっと単純に、まさかこんなに長く日本国憲法が維持されるとは思ってもいなかった、というところでしょう。マッカーサーの手下にケージスという弁護士がいまして、この人は日本にとって不利な条文を日本国憲法に多数盛り込んだ悪玉なんですが、昨今の憲法改正論議の高まりを受けて、あろうことかこのケージス本人に『日本国憲法はこれからどうすればいいんでしょうか』と聞きに行ったバカがいるんです。そのときのケージスの返答がふるっていて『あんなバカな憲法、まだ使ってたの?』と」  本来、憲法(Constitution)とは、その国の歴史や文化や伝統に則った「国柄」そのものを指す言葉である――と倉山氏は言う。憲法とは、その国にとって何が正しいのかを考える、いわば“哲学”なのだ。憲法を語るには、歴史の検証や諸外国との比較は欠かせず、当然その過程で条文も適宜アップデートされるべきものである。70年近くにわたって日本国憲法が一度も変えられていない…… という事実は、あたかも美談であるように語られているが、まっとうに考えればきわめて不健全な話なのだ。 「とはいえ、自民党の改憲案のように日本国憲法の文面をちょっとイジるだけでは、なんら根本的な解決にはなりません。繰り返すように、日本国憲法そのものが、日本を永遠に敗戦国に留め置くためにつくられた憲法だからです。日本の国柄を真に体現する憲法とは何なのか……それを考えることこそ、本物の“憲法論議”なのではないでしょうか」  倉山氏の新刊帝国憲法の真実(小社刊)は、戦後「日本を亡国にいたらしめた悪の憲法」としてタブー視されてきた帝国憲法(明治憲法)を、日本の歴史・文化・伝統に則ったまっとうな憲法として見つめなおす一冊だ。「日本国憲法が正義」という捏造されたファンタジーから脱却し、真剣に日本の未来を考えたいという人は、ぜひ一読を! <取材・文/日刊SPA!編集部> 【倉山満氏】 憲政史研究者。シリーズ累計20万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』に続く、「保守入門シリーズ」『保守の心得』、5月1日に『帝国憲法の真実』を発売
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