一般人がヤクザを脅す…交通事故の示談で組の名前を出した途端ヤクザが劣勢に
’08年の暴対法施行、さらには’11年に暴排条例が全国で施行されて以降、暴力団の居場所はどんどんと狭くなっている。この情勢に応じて一般人がヤクザを脅すというかつてなら考えられないような事態が起きているようだ。
「ヤクザにぶつけちまった……」
ひと昔前なら顔面蒼白、この世の終わりといった事態だが、今は立場が逆転している。某暴力団の二次団体に所属するA氏は、横断歩道を歩行中に信号無視で直進してきたカタギの車にはねられたが、泣き寝入りする羽目になったという。
「車の持ち主の男は、ペーパードライバーの女に運転させて、自分は助手席で酒を飲んでるようなクソ野郎。幸い全治1週間の軽傷で済んだけど、さすがにはらわたが煮えくり返って『休業補償もきっちり払えや!』って詰めたわけよ」
ところが、A氏はその際に自分の所属する組の名前を出してしまった。すると、その男はA氏が渡世人と知るや、一歩も引かずこう吹っ掛けてきたという。
「お前、ヤクザなんだろう? 文句があるなら、俺に言わずに運転していた女に言えよ。鍵を渡した時点で、俺には支払い義務はないから。そんなことより、お前に怒鳴られてうつ病になった。脅迫で訴えてやるからな!」
女を盾に言い掛かりをつける男に、A氏は言葉を失う。
「俺は純粋に被害者だし、男の言っていることはむちゃくちゃだよ。物損事故と違って人身事故の場合は、『運行供用者責任』といって車の持ち主も賠償責任を免れない。でも、男の車は搭乗者保険に入っていなかったから、保険会社も間に入ってくれない。となると、示談になるわけだけど、馬鹿を相手に交渉するのは頭が痛いし、わずか30万円の示談金のために仕事してくれる弁護士もいない。内心、殺してやりたかったけど、こんなヤツに関わっているくらいなら本業で稼いだほうが早いから……」
モラルの低いカタギの横行をヤクザが嘆くというなんとも皮肉な光景だ。
「昔は、こういう輩は闇金に連れて行ったもんだけど、今はヤミ金も“自爆上等”の面倒な客は嫌がるんだよ。警察や弁護士に駆け込んで踏み倒せちゃうから。モラルも教養もないアホがある意味無敵ってのは、社会的にどうなんだろうね」
そう溜息をつき、A氏は稼業に精を出すべく夜の街へと消えた。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
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