山田ゴメスの俺の恋を笑うな
恋宣言
鯉。
言わずともしれた観賞用にもなって食用にもなる淡水魚だ。昨日、六本木の『松栄』という寿司屋で、男の友人と鯉の話をした。
友人「鯉って美味しいよね」
私「洗いとか鯉こくとかね。アレって焼いては食えないんだっけ?」
友人「割とクセのある魚だからねえ」
私「そう? むしろ淡泊だと思うけど」
友人「海の魚にはない独特の泥臭さがあるでしょ?」
私「言われてみたらあるよね」
友人「あと、鯉こくは小骨も多くて、食べるの面倒くさいし」
私「結局、あんまし好きじゃないってこと?」
友人「いや、そこがたまらないのよ」
泥臭くて面倒くさい……まるで恋
だと私は彼の話を聞きながら感心した。そこまでやっかいな魚をわざわざ、たとえば山奥の秘境的な温泉宿まで足を運び、決して安くない値段を払ってまで食わなくてもいいではないか。河豚とか鮪とか鰯とか鰹を食ってりゃ、それでいいじゃないか。
私は今年48歳になる。流行りの言葉で言い表すなら”アラフィフ”ってやつだ。生殖機能は衰え、頭の毛ははらはらと抜け落ち、口腔内にこびりつくねばねばしたミルクコーヒーをキレイに洗い流してくれる唾液も充分な量を分泌せず、加齢臭もただよう。
そんな私だから、恋はいつも命がけだ。女性と会うたび、「これがもしかしたら人生最後の恋になってしまうのではないか」と、心の底から切実に恐怖してしまうのだ。
そんな私だから、相手に気に入ってもらえるならリアップも買うし土下座もする。つじつまの合わない出まかせだって、つい口から漏れてしまうかもしれない。本当に泥臭い。しかも面倒くさい。まるで鯉。でもやはり「そこがたまらない」と私は思う。
「それでも~ 鯉は恋~♪」(松山千春)なのである。
鯉:コイ目・コイ科。流れが緩やかな川や池などに生息する淡水魚。雑食性で、水草、貝類、ミミズ、昆虫類、甲殻類、他の魚の卵や小魚など、口に入るものなら、たいてい何でも食べるほどの悪食である。
鯉の洗い(右)氷で〆て、こりっとした食感と特有のタンパクな味を、ピリッとした酢みそで食べる。
鯉こく(左)輪切りにした鯉をみそ汁で煮た料理。
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