未払い残業代を取り戻すにはどうすればいい?
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆騙された(ペンネーム) 会社員 男性 31歳
昨年転職しました。入社の際に残業代を全額支払うと書面(Eメール)で取り交わし、それに伴い前職を退職し転職しました。しかし、実際は手当名目で一部残業代が支払われておりません。事前に書面でみなしや手当もなく全額残業代を支払うとやり取りを行い、にもかかわらず平気で契約を破る会社が許せません。
しかも、その企業は上場企業で某大手会社の系列企業です。表向きはコンプライアンスを謳っており、そのギャップに怒りを抑えられません。前職では契約どおり残業代をもらっており実質の収入も減りました。契約は資本主義の原則であり違反に対しては相当のペナルティが必要だと考えます。こういった契約を平気で反故にする企業に対し、私はどのように行動すればいいでしょうか。
◆佐藤優の回答
サラリーパーソンも執行役員以上の幹部を除けば、労働者です。労働者は自らの労働力を商品として販売し、その対価の賃金で生活する以外に生きていく術がありません。経営者と労働者は平等の権利を持っているという建前をもっていますが、一人一人がバラバラである労働者が経営者に対抗することはできません。労働賃金に詳しい東大大学院の小幡道昭教授はこう述べています。
<資本は個々の労働力を別々に使用するのではない。資本が独立小生産者と本質的に異なるのは、複数の労働力を商品として「買い集める」ことで、労働組織の優位性を我がものとする点である。しかし、労働組織に必要な統合は、労働力商品の売買における個別的な利益追求と整合的ではない。自分だけの賃金に関心がある労働主体に、労働組織のメリットをいかにして追求させるかという問題が発生するのである。
意欲や協力、熟練などの主体的要因を効率的に商品売買の形式で処理するために、賃金の支払方法にさまざまな工夫が施される。これを賃金制度とよぶ。ここにいう制度は、条文法や契約書のようなかたちで(中略)了解されるものも含まれる。労働主体の意識に深く関わる不可視の契機を処理するには、明文化したものの根底にある暗黙の合意のほうが規定的な力を発揮する。>(『経済原論 基礎と演習』134頁)
残業代を支払わないというのは、「明文化したものの根底にある暗黙の合意」が、悪い意味で機能している例です。あなたに戦う気持ちがあるならば、断固、戦うべきです。
こういう会社を相手にするときは、中途半端な戦いはダメです。あなたに有利と思われる証拠書類を集めて、労働法に詳しい弁護士と相談することです。あなたが住んでいる地域、もしくは会社が所在する近くの弁護士会で相談すれば、こういう戦いに慣れた弁護士を紹介してくれます。
弁護士の力を借りて戦えば、未払いの残業代を取り返すことはできます。しかし、企業は反逆する従業員を許しません。しばらくはおとなしくしていますが、配置転換、あるいは昇進を遅らせるなど、さまざまな嫌がらせをしてきます。最終的には、あなたが音を上げて会社から飛び出していくことを狙っているのです。こういう状況への対処方針は、2通りになります。第一は、仕事で目に見える業績をあげ(必ず数値化される内容でなくてはなりません)、あなたが勤務していることで、会社に大きな利潤が上がっていると証明できるようにしておくことです。資本主義社会で、企業はいかに嫌な従業員でも、利潤を上げていればクビにできません。
第二は、3人の仲間を見つけて、企業内に戦闘的な労働組合を組織することです。そして、企業があなたに不当な扱いをしないように、組合活動を通じて戦っていくことです。どちらを選ぶかは、あなたの人生観の問題です。
【今回の教訓】
利潤を上げるか、組合を組織すべき
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【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『読書の技法』『日本国家の神髄』など著書多数 (※写真はイメージです)
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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