不動産のプロが明かす「“未公開物件”はウソ」
住まい探しをすると必ず目にする「未公開物件」という売り文句。そもそも折り込みチラシに書かれていたり、ウェブサイトに載っていたりと簡単にアクセスできるにもかかわらず、「未公開」な時点で疑わしいが、いったいどういったメカニズムがそこにはあるのか。
「基本的にすべての物件は市場に出た瞬間に情報共有されるため、一度、市場に出た物件はどの不動産会社でも扱うことが可能です」と指摘するのは、『不動産業界の人だけが知っている新築マンションは買わないほうがいいワケ』が大きな反響を呼んでいる不動産コンサルタントの城戸輝哉氏。
「特定の会社でしか扱っていない物件というのは、まずありえません。『お得な情報があったらください』と不動産業界にいると、挨拶のように言われますが、お客さんが期待するような『未公開物件』も『掘り出し物件』も基本的に存在しません」
では、なぜ「掘り出し物」や「未公開」といった売り文句を業者側が使うのか。
「お客さんの購買欲を煽ろうとする業者側の営業戦略ですね。要は『未公開』『掘り出し』という言葉を使うことで、お客さんをコントロールしようという思惑が働いているのです。『今日明日中には決断しないと、別のお客さんに流れますよ』というセリフなども、営業の手法のひとつ。不動産業界は手数料商売なので、不動産業者側もいかに早く売り、次の客を取るかで頭がいっぱいなのです」
そんな詐欺まがいの営業トークがまかり通るのには、不動産業界の構造にも理由があるという。
「不動産を求めるお客さんは大半が一見さん。初めて会ったお客さんに、掘り出し物のお宝物件を紹介するわけがないですよね? 常連客相手のビジネスではないうえ、売り手と買い手の情報格差が大きいので、現状は完全に業者側に主導権があるといえます」
そもそも“相場に比べればお買得な物件”であっても、すぐに飛びつくのはオススメできないと城戸氏は強調する。
「自身のライフスタイルに合わない家だったら、いくらお買得でも、買う意味はありません。住まい探しで大切なのはマッチング。にもかかわらず、不動産屋さんに『お値打ち物件がほしいです』と言おうものなら、向こうが売りたい物件をガンガン持ってこられるのがオチです。しまいにはカモ認定され、営業電話や営業メールの嵐になって、逆にいい物件と悪い物件なのかの判断もつかず、情報に踊らされてしまうだけ。軸が定まらないままに物件購入を希望してくるお客さんに対して、不動産業者は予算が高めの人はこの物件、予算が低めの人はこの物件といった、機械的な仕分けしか考えません。残念ながら、購入者の要望を引き出してくれるような熱意や余裕のある不動産業者の営業マンは少数派だと認識しておく必要があります」
「未公開物件」という偽りのお得感に惑わされてしまうと、“情弱客”として営業マンにコントロールされるだけとくれぐれも気をつける必要がある。
<取材・文/日刊SPA!編集部>
【城戸輝哉氏】
建築・リノベーションプロデューサー、不動産コンサルタント。自身がCEOを務める「スマサガ不動産」が「営業マン不在・物件広告なし」という業界の常識を覆すスタイルを確立し、口コミとホームページのメッセージだけでクライアントが集まる住まい探しとリノベーションの専門家集団として大きな注目を集める。初の著書となる『不動産業界の人だけが知っている新築マンションは買わないほうがいいワケ』が2月2日発売。
『不動産業界の人だけが知っている新築マンションは買わないほうがいいワケ』 あなたの「住まい探しに関する常識」は間違いかもしれません。 |
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