更新日:2022年08月21日 12:50
ライフ

インストラクターのお世辞が上手なフィットネスクラブほど退会者が多い

意外だった退会理由

 さて、東京都にある大手フィットネスクラブでは、会員の退会率が高いという課題を抱えていました。抽出した11施設の年間平均退会率は37%で、確かに低い数字とは言えませんでした。  なぜやめるのかという問題は、いろいろな業種・会社でよく直面する問題です。ある大手ホテルの役員が、「当社の結婚式場の契約でドタキャンが多くなっており、その原因を調べても、『なんとなく』『全体的に……』といった漠然とした理由しか分からず、対策に困っています」とこぼしていたことがありました。  フィットネスクラブも同様で、退会理由を調べると、いつも「自己都合」「引越しのため」といった当たり障りのない答えで、クラブ側の対策に役立つ情報は得られないまま運営されていました。  しかし、お客様の立場で考えると、やめる・やめないは種々複雑な理由(家族・仕事・経済面・人間関係など)で決まり、自身でも明確に整理できないことも多く、わざわざ答えるに至らないといったところが実情でしょう。  さて、調査項目は、施設・設備、レッスンメニュー、インストラクター、現在の状況など50項目にわたりました。ある項目での不満度が高いと退会に結び付く可能性があると考えて分析が行われました。  以下は、代表項目の不満層の割合を示したものです。いずれも年間平均退会率37%を説明する理由にはならないように見えます。このままでは、満足・不満足、心理ボタン、飽きた・飽きないといったフィットネスクラブ内で発生する要因以外の理由で退会が起こることとなり、クラブ側の努力では退会率を下げることが難しいという結論になってしまいそうです。 <フィットネスクラブ満足度調査結果> 項目例…不満回答者の割合 設備…11.2% レッスンメニュー…11.8% インストラクターの教え方…7.4% スタッフとインストラクターの接客態度…4.9% スタッフとインストラクターのお世辞(褒め上手)…9.1% コストパフォーマンス…9.1% 飽きてきた…9.0%  そこでさらに詳しく調べるために、全50項目と退会率の相関を取ってみました。すると、1項目だけ相関が認められた項目があったのです。  その項目とは、「お世辞」(スタッフやインストラクターの褒め上手さ)でした。退会率との相関係数は0.77で比較的高い値を示したのです。 ⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1282074
フィットネスクラブの退会率とお世辞の相

フィットネスクラブの退会率とお世辞の相関

 ただし、「インストラクターのお世辞が上手なクラブほど、逆に退会する人が多い」という逆相関の関係になっているのです。普通に考えると、インストラクターが褒め上手であれば、会員は悪い気はせずクラブを継続しようとするはずです。調査分析がおかしいのか、もう少し隠れた要因があるのか、さらなる検討が必要でした。
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