部屋で教祖を囲み、座禅から始まる。目をつぶり、10分ほど声を出し続けながら、手を合わせる。薄目を開けると、その間、教祖の後ろで正座で待機していた弟子が、なんとコックリコックリと船をこぎながら寝てしまっている（教祖にバレたら怒られるんだろうなぁ、とコチラがヒヤヒヤ）。教祖が手のひらを参加者にかざしながら、念仏のような言葉を唱えはじめた。 「霊感がある人は、私の言葉に反応してカラダが動きます」 　いやいや霊感って……。私には何も効かない。まさか誰もいないだろうと思いきや、ゆらゆらと動いている女のコが2人もいる！ 　教祖がA子に向かって糸を引っ張る動作をすると、それにつられて動き始めた。「え、なんで！」と彼女自身も驚いている様子。 　B子には、「手と手を合わせたら離れなくなります」「壁とカラダがくっついてしまいます」などの言葉を投げかけると、バラエティ番組の催眠術企画でよくある嘘みたいな光景が、次々と目の前で起こったのだ。もうワケがわからない。瞑想なのか手品なのか。 　教祖が合図をすると、後ろに待機していた弟子がビクッと反応し、すぐにCDラジカセで音楽をかけた。癒し効果がありそうなゆったりとしたリズム。 「これからヒーリングを行います」 「（……ヒーリングってなんだ？）」 　B子に対して、教祖がなにやら怪しい動作をしながら（パフォーマンス？）矢継ぎ早に念仏のようなものを浴びせかける。すると、驚くべきことに彼女の目から涙が！ 　何が起こっているのか？ 力が抜けたように後ろに倒れると、それを弟子が受け止め、座布団の上に寝かせた。彼女は意識を失ってしまっている。一連の流れを興味深く眺めていたが、朝早かったせいなのか、私は非常に眠くなってきた。すると、教祖が見透かしたようにこう言う。 「これを見ている周りの人は眠くなります。それはヒーリングの効果です」 「（うーん、どうなんでしょう）」 　さておき、しばらくしてから教祖がぶつぶつと何かを唱えると、ようやく彼女の意識が戻ったようだ。これにてヒーリングは終了。教祖は、足早に戻っていった。 　部屋に残された参加者たちは、まるで狐につままれたような顔をしていた。正直、信じられない。私以外にも釈然としない表情をしている人も多かった。そこでヒーリングを受けたA子に聞いてみる。 「実際のところ、糸で引っ張られるのはどうだったんですか？」 「あの……じつは、ちょっと異様な空間で引っ張られる動作をされたら、なんとなくそっちに動きたくなっちゃって」 　霊感とかヒーリングの効果というより、A子はその場に流されやすい性格ということか。一方で、目に涙まで浮かべたB子のほうはどうだろう。 「教祖から四方八方から念仏のような言葉を浴びたら、なんかカラダから魂が抜け出ていく感じがして。その後は温かくなって、夢のなかにいるような気分でした。あまりよく覚えてません」 　これがヒーリングの効果か。信じるも信じないも自分次第。科学では解明できないこともあるのかもしれない。こうしてすべての修行は終了した。