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結局、最後に儲かるのは資本家? 今後の「トランプ・マジック」に要注意

結局、最後に儲かるのは資本家? 今後の「トランプ・マジック」に要注意

 トランプ氏が大統領選に勝利したのは、「誰のための国なのか?」、この問いかけがアメリカ国民の中にあったからだ。果たして金持ちのための国なのか? 一体この国は誰のものだ?  答えは簡単、「国民のためのもの」である。  しかし、アメリカ国民はそうは思わなかった。このままヒラリー・クリントン氏が大統領になれば、ますます自分たちの国ではなくなる。世界中の富を独占しようとしているお金持ちのための国になってしまうのではないかと思った。  2011年9月17日にニューヨークの金融街、ウォール街で若者を中心として「ウォール街を占拠せよ」という反格差デモが起った。アメリカの資産の大部分を上位1%の富裕層が所有していることに対して、若者たちは”We are the 99%!” を叫んだ。  アメリカは人種の坩堝(るつぼ)と言われる多民族国家であり、宗教もさまざまだ。だが、アメリカ人たちは「アメリカ国民」であるということで国の縁、「国縁」の引力を維持してきた。その「国縁」の中核にあるのは、「みんなが豊かになる」ことである。  ところが現実は、「99%の人」が貧しくなって、「1%の人」だけが豊かになっていく。若者たちは気づいた。我々は実は国に守られていないのではないか、国が守っているのは、1%の人の「富」だけではないか。自分たちは「99%」の貧者である。彼らの「国縁」に裏切られたという思いが、あのデモにつながったのである。  トランプ大統領はだいぶ支離滅裂なことを言っているが、その中の「国民のためのアメリカを取り戻す」「国民こそがアメリカという国の主役なのだ」という言葉にアメリカ国民は共感、共鳴した。そして、結果としてトランプ氏を選んだ。まさにそれはイギリスがEUから離脱したのと同じ文脈上で起こった現象だった。  だが、トランプ大統領がどれだけ国民に、「アメリカを取り戻す」と訴えても、もちろん彼は大実業家であり、ビジネス的発想で政治を行おうとしている。「アメリカ株式会社」の社長として損になるような国家経営はしないだろう。ただし、そのやり方で果たしてアメリカの貧富の二極化が本当に是正されるだろうか。  もちろん貧しい方の収入が上がるかもしれない。その影で、富んでいる方はますます富む方向へいく可能性がある。「最低賃金上がっただろう」「平均年収上がっただろう」とアピールしている背景で資本家がもっと豊かになっているかもしれない。そのような「トランプ・マジック」に、アメリカのマスコミや国民は目を光らせておくべきであろう。 【佐藤芳直(さとう・よしなお)】 S・Yワークス代表取締役。1958年宮城県仙台市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、船井総合研究所に入社。以降、コンサルティングの第一線で活躍し、多くの一流企業を生み出した。2006年同社常務取締役を退任、株式会社S・Yワークスを創業。最新刊は『なぜ世界は日本化するのか』(育鵬社)。 <写真/Michael Vadon(flickr)
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