麻雀漫画『アカギ』、20年に及ぶ長期決戦が急転直下の終幕、なぜこうなった?
麻雀コミック誌『近代麻雀』(竹書房)で連載中の人気作品『アカギ』。作者は『カイジ』、『銀と金』等でおなじみの、ギャンブル漫画の大家・福本伸行氏。多くの作品群のなかで最長寿の連載なのが1992年に連載を開始した『アカギ』だ。コミックスの累計発行部数1200万部。これは、同ジャンルのコミック売上げとしては“異端”の数字である。
元々は同誌の姉妹誌『近代麻雀ゴールド』(2005年に休刊)で連載していた『天』で、主人公・天の対戦相手として登場した伝説の雀士・赤木しげる。白髪の少年・アカギが麻雀と出会い、裏麻雀界のトップに君臨するまでの物語を追うスピンオフ作品という位置付け。連載当初からアカギの異端の戦術や麻雀・博打観、そして迫真の闘牌シーンが綿密に描かれ人気を博してきたが、今年2月、ファンを騒然とさせる発表がされた。来年2018年2月をもって、約27年に及ぶ連載に幕を下ろすことが正式に決定したのである。20年間続いていた“鷲巣麻雀編”は、その時点で「残り3話」ということも同時に発表されたのだ。
ファンの多くは連載終了の事実よりも、「あの鷲巣麻雀があと3話で終わる? いったい、どうやって?」ということに俄然、興味を惹かれた。
「鷲巣麻雀」とは、1種4枚の麻雀牌のうち3枚をガラス牌(つまり、相手から透けて見える)にするという特殊麻雀。不完全情報ゲームである麻雀の定義を根底から覆す、圧倒的斬新なルール設定は、ファンの心を文字どおり“鷲掴み”にした。戦後日本の裏面で暗躍する大物フィクサー・鷲巣巌の全財産を奪い取ろうと、アカギは自身の血液をカネに換えて勝負を挑む……というのがおおまかな舞台設定となる。
勝負は半荘6回戦。「残り3話」の時点で、局面は6回戦目のオーラス南4局、つまり最後の1局だ。これだけ聞けば「3話あれば余裕で終結するんじゃないか?」とも思えるが、それまでの連載進行のスピードを知る読者にとっては、「ありえない」となる。
なぜか。連載の進行ペースを時系列で追うと一目瞭然。6回戦・南4局が始まったのは、3年前の2014年。そこから、
・配牌を取るのに丸1年
・闘牌開始して7巡目までに丸2年
南4局が始まってから約35話、計3年間が現実時間で進行しているわけである。作中の時間経過にして3分ほどだろうか。その間、主人公のアカギは、元々無口なキャラだが、心中の描写も含めてほとんどセリフがない。その代わりに、3年間、アカギの背後で観戦している仰木(ヤクザ)が、配牌を2枚取るたびに「おおッ」、「まずいっ」、「アカギ……」、「なんだこの引きは!」などと喜怒哀楽し、狂言回し的に状況を説明する――それが繰り返されていたのである。
さらに進行ペースを巻き戻せば、6回戦が始まったのは13年前の2004年。6億円あった鷲巣の資金が底を尽き、鷲巣も自身の血液を賭けるという波乱の展開になりつつ、2011年から丸2年かけて描かれた南3局。直撃の血抜きボーナスを狙うアカギが、鷲巣から2度出たアガリ牌を2連続見逃しした後、最大限にまでアガリ点を高めたすえに、3度目のアガリ牌で直撃を達成。まさに蜘蛛の糸をたどるようなアカギの打ち回しで鷲巣は絶命。が、そこから誰もが想像もしえなかった「地獄編」が丸1年かけて始まる。地獄に堕ちた鷲巣が、亡者たちを決起し地獄の鬼や閻魔大王と戦い、現世に戻るまでの話だ。
そうした顛末を受けて再開した南4局だけに、「あの南3局を超える闘牌、ギミックを残り3話で完結できるのか?」というわけだ。
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