麻雀漫画『アカギ』、20年に及ぶ長期決戦が急転直下の終幕、なぜこうなった?
(※以下、ネタバレを含みます)
結論からいえば、終結までに「3話」は必要なかった。丸3年かけて築き上げた闘牌、20年かけて描かれた勝敗は、残り2話で終結したのである。4月1日に発売された『近代麻雀』最新号で鷲巣麻雀が終結した今、簡単に「残り3話」の展開を振り返ろう。
【局面】国士無双から字一色に方針展開をした鷲巣。「東」「白」「発」「中」をすべて対子(2枚)で持っていて、部下の鈴木も同種の牌を1枚ずつ持っている。つまり、鈴木がすべての字牌を鷲巣に「ポン」させて、最後に残った「南」か「西」の単騎待ちに振り込めば、アカギの点数を上回る鷲巣が、その局を制す。部分的には鷲巣の勝利が確定している。
【鷲巣麻雀/ラスト3話目】鈴木が「白」を切る。当然「ポン」しようとする鷲巣だが、「ぐっ、ぐぐっ」「出ん…!」「声が出ん!」「肺に」「空気がない…」で終了。
【鷲巣麻雀/ラスト2話目】鷲巣の異変を見た部下たちが「息がない!」「感じられない脈も…!」と蘇生・輸血に動き出す。しかし、血抜きの鷲巣麻雀では途中での輸血は論外、負けを認めることになる。それを仰木が忠告したところ「構わぬっ!」と輸血を敢行。つまり、この時点でアカギの勝利が確定する。
これまでの文脈、伏線をすべて無視するかのごとく、畳み掛けるように幕切れへと向かった『アカギ』。ちょうど昨年秋、20年以上の長期連載だった『Dreams(ドリームス)』で、主人公の久米がプッツン。意図的な“7連続デッドボール”という暴挙のすえ、「高野連に存在していなかった」ことになり、破綻的な最終回へと向かい話題となったが、それと同様に、鷲巣麻雀の決着についても、ファンの間では様々な物議を醸した……。このラストは想定内だったのだろうか。出版関係者は以下のように語る。
「10年ほど前。ちょうど6回戦で鷲巣がダブル役満を上がった頃。当時すでに1局1年ペースで自分も展開が気になったので、『アカギはどうなる?』と編集部の友人に聞いたことがあるんです。そしたら『タネは明かせないけど、誰もが驚くアカギの技が出る』と答えてました。恐らく、それは南3局の直撃シーン(前述・アカギが2連続見逃しのうえ、3枚目でロン)のことで、本来はあそこで終わっていたと思います。ただ、福本先生的には、その後も描き続けていくうちに、鷲巣を単純に負けにしたくなかったんでしょうね。10年前には想定外だったと思われる地獄編を描いてる頃、嬉々として『アカギ読んでる? 僕が思う地獄の姿はね……』と作品論を熱く語り出したと、別の編集者から聞きました。地獄編については、純粋に描きたい世界を描いたって意図だと思いますよ」(青年漫画誌編集者)
「対局中に死んだことで『伏線を台無しにした』とか批判する人は多いし、南4局の牌譜を並べて、対局の展開予想をしていた僕も『えーーーっ』となった。でも、鷲巣麻雀編の最終回を読んで、むしろ伏線をすべて回収したって印象です。『アカギ』の元となる『天』のラスト3年は、それこそ麻雀シーンは一度もない、アカギの生前葬のお話でした。天を含めた登場人物一人ひとりに、アカギが死生観を語るって話ですが、鷲巣麻雀編のラスト1話は、そこに繋がるんです。鷲巣麻雀を通して、アカギは常に『きな臭い苦戦の予感』『破滅の未来』などと、勝負の流れから見据えた、近い将来を予感しています。ラストに鷲巣の死に様を見たうえで、自分の死に様すらを予感する――。福本作品において、ギャンブルとは技術の応酬や勝ち負けだけではなく、人生と同義なわけですから」(麻雀ライター)
【鷲巣麻雀/ラスト1話】で、生死の狭間の勝負から解き放たれたアカギは、ふと空を見上げて鷲巣へと心を向ける。
〈博打の絶頂で逝ったか…なるほど愛されている… オレの死に様はどうかな…ま、オレは凡庸に死ぬ が…どんな死に方であれオレらしく死ぬ…! 鷲巣が鷲巣らしく逝ったようにオレも消えよう その時はオレらしく………!〉
SNS上では批判の多かったラスト2話までの展開も、ラスト1話で称賛、絶賛の声が多く見られるようになった。鷲巣麻雀のラストの余韻は、作品から心の離れていたファンを揺り戻すこととなったのか。ともあれ、『アカギ』ラストまで残り10話。どんな時代設定で、どんな勝負が展開されるのか。それともギャンブルは描かれないのか。新章の展開を見ていきたい。〈取材・文/日刊SPA!編集部〉
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