生涯で20回以上ポリスに肩を叩かれた男・山田ゴメスの最新「職質日記」
とは言え、この日の僕は仕事で大きなトラブルを抱えていたわけでもなく、パチンコで爆負けしたわけでもなく、夜のホームパーティに向けての食材を伊勢丹に買いに行く途中……むしろマインドはウキウキ気味であったにもかかわらず──こういうケースは「職質マスター」で馴らす僕としても、けっこう珍しい。
声をかけてきたのは身長190cm近くはあろう、坊主頭&プロレスラー張りにガッチリした体型で、グレーのジャンパーを羽織り、カーキ色のチノパンツをはいた、年の頃は40代くらいのおじさんだった。マスクを着用していて眼光はやたら鋭い。
一瞬、目が合ってしまい、あまりにおっかなかったので、踵を返して早歩きした。すると「ちょっと待ってくださ~い」と、呼び止められる。思わず駆け足で逃げる僕……の前にガッと立ちはだかり警察手帳を差し出される。そのとき胸によぎったのは「ああ、よかった…警察のヒトで」という安堵感だ。
結局、バッグの中身から財布、さらには24個あるポケットひとつ一つを徹底的にまさぐられ、20分近くの“無駄な時間”を費やしてしまったわけだが、「はい。大丈夫です。お忙しいところすみませんでした~」とお別れする間際、念のため“素朴な疑問”を投げかけてみた。
「なんで、僕だったんですか?」
回答はこうだった。
「だって、アンタ逃げちゃうから」
普通逃げるだろ! 2メートル弱ある坊主頭でマスクの男にメンチ切られたら。
過去には、キャップとスニーカーにダボダボのジーンズを腰履きでキメた、いかにもチャラいB-BOY風のアンちゃんに警察手帳を突きつけられたこともあった。仕事上、極力警官っぽく見えないよう凝った変装をするのはかまわない。が、人の怪しさは棚に上げといて、自身の怪しさに対し無頓着すぎるのもどうなのよ……と、僕は一言だけ忠告したい。
【山田ゴメス】
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」https://nikkan-spa.jp/gomesu(PC版)も配信中。著書『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)
<取材・文/山田ゴメス>大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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