更新日:2022年08月30日 23:32
デジタル

ストレス解消でポチっ…読む時間もないのにキンドルには1000冊の電子書籍が【鴻上尚史】

親切すぎるキンドルさん

 ちなみに、紙の本だと、この日付がもっと古くなります。10年前に買ったとアマゾンに教えられて、散らかった仕事部屋を見て、溜め息をつくのです。「おお。このカオスに紛れた中から救出できるんだろうか」と悲しい気持ちになります。  電子書籍はなかなか定着しませんが、まずは、マンガを読むのにはとても便利です。  活字は買わないけれど、マンガは買ったという人は多いでしょう。電車でも空港でも、電子書籍リーダーを持っている人の大部分がマンガを読んでいます。  僕も、『Q.E.D.証明終了』とか『進撃の巨人』とか『金田一少年の事件簿』とか続々と買いました。  慣れてくれば、活字も便利です。問題があるとすると、キンドルさんは親切で、読み始めると画面の左下に「本を読み終えるまで:2時間30分」とかっていう予測を出してくれることです。いや、これはこれで便利なんですけど、分厚い本だと「読み終えるまで:6時間20分」なんて場合があります。溜め息がでます。  今、英語の本をつっかえつっかえ読んでいるのですが、「読み終えるまで:40時間」と出ています。死にそうになります。もちろん、非表示にできるのですが、機能があると知ると、つい、見たくなるのです。  電車の中でひょいと取り出して、電源を入れると、読んでいた画面から表示されます。これも便利なのですが、そうすると、なんという作者のなんという作品か分からないまま読み続けられるのです。  活字の本だと、本を手に取るたびに、表紙で作品名と作者を確認できます。キンドルはそれがなくても読めるので、「面白かったけど、作者と本のタイトル、覚えてないや」という状態になるのです。  まだまだ、電子書籍は日本では定着してなくて、電子書籍化になってない作品も多いです。反対している作者さんもいて、そういう人の作品は全部が紙なので、逆に買うのをためらってしまいます。整理整頓術じゃないですけど、なるべく持たないまま楽しめたらいいなと思ってしまうのです。そんなわけで、今日も僕はストレスに負けて、読む時間もないまま、ポチるのです。はい。 ※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて好評連載中
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。
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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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