ネットナンパ師から自称「フリーAVディレクター」への華麗な(!?)転身…アダルトビデオ業界を脅かす“素人”の正体
決意から1週間ほどで、チンピラ男に2人の女性を紹介すると、青野氏の手元には20万円が振り込まれた。女性とは、以前から借金や不安定な仕事の相談を受けていた関係で、少し話しただけであっさりと風俗で働くことを決めてくれたのだという。その後も数十人を紹介し、スカウト料だけで300万円近くの現金を得た。
「スカウトには“買取型”や“バック制”といった形態があるんですが、僕の場合は全て”買取”。この場合、スカウト料は減りますが、最初に現金をもらってしまえばあとは知らんぷりで大丈夫なので、楽なんですよね」
“買取型”とは、青野氏が紹介した女性を風俗店などが買い取ってしまうこと。その後、女性が飛ぼうと(逃げようと)、逆に女性が大きな利益を上げようと青野氏には最初の買い取り料しか入ってこない。一方で“バック制”は、青野氏が紹介した女性の働きに応じて、青野氏の元にカネが入ってくる仕組みだ。しかし男はやはりチンピラ。紹介して縁が切れたはずの女性から「約束と違う」とのクレームが連日寄せられるようになる。
「男は風俗店側と結託して、女性の給料から驚くべき金額を勝手に中抜きしていました。給料を見込んで買い物をしていた女性など、やむなく借金しなければならなくなった場合もあって、そこで考えたのが“動画の販売”だったんです」
2年ほど前、エロサイトの掲示板などを通じて「自作のエロ動画を販売できる」サイトの存在を知った。それまでは映像を見て楽しむ側だった青野氏だが、そこで女性らとの性交シーンを収めた動画を販売し、女性にお金を渡せるのではないか……。
しかし、いくら頭のネジが……という女性でも「アダルトビデオに出演しないか?」と面と向かって言えば、拒否されることは明らか。そこで考えたのは、女性や青野さんの顔を完全に隠した状態で映像を撮ってみることだった。
「僕なんかは、女性の顔が見えないと興奮しませんが、素人作品の世界においては、顔が見えない作品でもかなり受け入れられていた。顔が見えないことで“ホンモノの素人感”が出る、とでも言いましょうか。1本800円ほどの作品が飛ぶように売れ、この2年で百十数本、計数千万円の利益を得ました」
とはいえ、真面目な性格だった青野さんだが、ここ2年ほどで自ら「自分は変わってしまった」と省みる。
「もはや、女性を出演させるためには……女性を使って金儲けするために手段を選ばなくなっている気がして怖いです。裏仕事掲示板やTwitterなどのメジャーなSNSはもちろん、モデル募集サイトを作って女性を集めまくり、こいつは風俗に売れるか、AVにするかと値踏みしています。税金だって払っていません。会社勤めは変わらずですが、年収400万円のために毎日会社に行くのもバカらしく、休みがちになることも……」
青野氏は今年に入ってから、フリーのAV監督であるX氏と手を組み、インディーズ系アダルトビデオ制作会社からの委託制作も行うようになった。十数本の制作・納入を終えて、月に200万円ほどの収入を得ているという。
「ネット上で裏ビデオを販売したり、その制作に関わり逮捕される事例も多くなってきています。やはりオモテで仕事するのがいいなって……」
素人が席巻する「アダルト業界」の凋落、そしてそこから生まれる新たな潮流。青野氏の事例を「まだカワイイほう」と指摘するのは、某エロ本の元編集長。次回、素人だらけのネット・エロ業界に、プライドを捨てたプロたちが殴り込みをかけた結果、事態はさらに混迷を深めていく……。(続く)
<取材・文/伊原忠夫>
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