更新日:2018年08月20日 19:59
ライフ

最後の鉄火場「東京競馬場101投票所」を知っていますか?

 競馬の日本ダービーが開催されることでも知られる東京競馬場は、競馬をあまりやらない方でも一度は行ったことがあるという方も多いはずだ。いわば日本で最大のギャンブル場であり、競馬ファンの聖地でもある。そんな府中競馬場に競馬好きであってもあまり馴染みのない場所がある。東京競馬場101投票所……もし、この場所を知っているなら、あなたはかなりの競馬通か、あきらめの悪いギャンブラーである。
最後の鉄火場 東京競馬場101投票所をあなたは知っていますか?

こちらが101投票所の入り口。ひっそりとしているのは気のせいだろうか……

 では、その101投票所とは一体何か? その実態は、東京競馬場開場日のみオープンになる岩手競馬(盛岡・水沢)専用場外馬券売り場である。中央競馬、すなわちJRAの聖地なのに地方競馬の場外売り場!? そこは中央競馬の華やかさとは一線を画す別世界なのである。  101投票所の場所はフジビュースタンドの1階。スタンドから見たら地下のような場所にある。この101投票所の最大の特徴は東京競馬場、すなわちJRAの競馬場の中にあるにもかかわらず、JRAの馬券は販売していないことだ。そのため、ここに朝からやってくる客は生粋の岩手競馬ファン。目の前で競馬をやっているのに、こちらに夢中になる時点でその度合いも「マジ」なのだ。  フロアでは岩手の全専門紙が販売されており、岩手競馬を楽しむうえでの環境も整っており、万全の体制で岩手競馬を楽しむことができる。中央競馬のレースが見られるモニタもあるため、前売りでJRAの馬券を買っておいてこちらに来る猛者もおり、骨の髄から競馬狂な人々がここには集まってくるわけだ。  だが、そんな「猛者の部屋」も、東京競馬の最終レースが終わると様子が一変する。岩手競馬のメインレースが17時台に行われるため、JRAで最終レースまで勝てなかった一部の「あきらめの悪いギャンブラー」たちが、最終レースが終わるとぞろぞろやってきて、最後の希望に賭ける場と化すのだ。その様子はまさに鉄火場。9回裏2アウト満塁で打席に立った気で101投票所にやってくるのである。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1350478

G1安田記念開催日の昼過ぎに訪れた101投票所。岩手競馬マニアの方々がモニターに向かって熱く叫んでいた声が、閑散としたフロアに響いていた

 東京競馬場の最終レースが終わると、それまで数十人程度だった101投票所が何百人もの人でぎゅうぎゅうになる。そして皆、入り口に置かれた岩手競馬のメインレースと最終レースの専門紙馬柱をコピーしたもの片手に予想をしようにも見慣れぬ馬に知らない騎手、コースも何もわからぬまま、17時過ぎに迫る最後のひと勝負への時を待つ……。  そんな101投票所に、私はこともあろうかダービー開催日に行ったことがある。朝の第一レースからファンファーレの時点で大歓声であった東京競馬場スタンドでの様子と違い、投票所内は歓声ひとつ上がらず、一部のコアなファンがモニタに向かって必至に「差せ!」「粘れ!」と叫ぶ本能むき出しの姿が見られた。

東京競馬場の最終レース後の101投票所。最後の大勝負に出る競馬ファンでごった返し、その雰囲気はまさに鉄火場

 ここ数年、ギャンブル場はどこもかしこも小綺麗になってしまった。だからこそ101投票所にいってみてほしい。そこにはどこか懐かしい鉄火場の熱さが残っているからだ。 取材・文/佐藤永記
公営競技ライター・Youtuber。近鉄ファンとして全国の遠征観戦費用を稼ぐため、全ての公営競技から勝負レースを絞り込むギャンブラーになる。近鉄球団消滅後、シグナルRightの名前で2010年、全公営競技を解説する生主として話題となり、現在もツイキャスやYoutubeなどで配信活動を継続中。競輪情報サイト「競輪展開予想シート」運営。また、ギャンブラーの視点でプロ野球を数で分析するのが趣味。
Twitter:@signalright
おすすめ記事