思想や人物ではなく、政策の中身を是々非々で判断
横田 一 氏
――サングラスをかけているのはなぜですか?
横田:記者が素顔をさらして得することはありません。潜入取材をすることもあるので、人前に出るときはなるべく素顔を明かさないほうがよいと思っています。例えば2017年3月3日の石原慎太郎・元都知事の豊洲問題に関する会見は、日本記者クラブの主催でした。記者クラブ主催の会見は、記者クラブ側が情報を独占しようとしてフリー記者が排除されることが多く、このときも直談判をしましたが入れてもらえませんでした。そこで受付をせずに会見場に入って、石原元知事に質問したのです。
――バレて追い出されることも多そうですね。
横田:安保法制に関する公明党の部会を取材しようとしていたら、記者クラブ加盟社の新聞記者に告げ口をされ、追い出されたうえ追いかけ回されたこともありました。2015年4月の北海道知事選では、告示日には札幌市内の高橋はるみ陣営の選挙事務所で取材できたのですが、私が高橋知事に質問したり批判的な記事を書いたりしたところ、会見から追い出されるようになりました。投開票日に事務所で当確が出るのを待っていたら、いきなりスタッフに取り囲まれて追い出されたのです。追加取材のために翌日あらためて事務所を訪れると、今度は「住居侵入、不退去。警察を呼ぶ」と言われ、エレベーターの中では「コラ! いい加減にせいこの野郎」と恫喝されもしました。
――その一方で、鈴木宗男さんや小泉純一郎さんの著書で編集協力を行い、小池知事や橋下前市長、小泉進次郎氏らについて肯定的な記事も多く書いています。
横田:僕は、思想や人物で判断してはいないんです。小池さんについてもそうですが、政治家の場合は、その人の政策の中身をその場で是々非々に判断しているだけです。
――2018年、横田さんが注目する取材ポイントはどこですか?
横田:これまで取材してきた小池都政や永田町の動向、安倍総理周辺にある一連の疑惑を追い続けることに加え、2018年はいよいよ憲法改正が一気に押し進められることになりそうです。これは、公明党の動向がポイント。安倍政権は改憲に積極的な姿勢を見せていますが、与党は一枚岩ではない。当の自民党内でも反発があるし、このまま憲法改正をゴリ押ししようとすれば公明党はついていけない。支持母体の創価学会、特に婦人部からの突き上げに耐えられなくなっています。自公連立に、大きな軋みが出てくるでしょう。
――となると、自民党は公明党ではなく、維新・希望との連携が視野に入ってくる?
横田:希望の松沢成文氏、細野豪志氏、長島昭久氏らが自民党との連携・改憲に向けて積極的な動きを見せています。しかし、維新はまだしも希望の民進系議員はそれについていけないでしょう。連合が希望を完全に見放す可能性もあります。2018年に安倍政権が改憲を進めようとすればするほど、政界再編は避けられない事態になってくるでしょう。また、自民党内でも石破茂氏、細田博之氏、小泉進次郎氏など、安倍政権の政策に異を唱える動きも強くなってきています。あまり無理に進めようとすれば、党内からも“安倍おろし”が起こってくる可能性があります。