更新日:2022年12月17日 22:56
エンタメ

オタク研究の大家・吉田正高氏の急逝を悼んで…OVAとインディーズメタルの歴史を振り返る

かつて、アニメの声優や主題歌の歌手は見下される存在だった

宮里久美の3枚のスタジオ・アルバムと『メガゾーン23』OSTおよびイメージ・アルバム(筆者撮影)

 『メガゾーン23』の時祭イブ役を任された新人アイドル歌手の宮里久美は、アイドル声優の先駆けの一人で、ホリプロでは最初のアニメ歌手だった。今でこそアニメの声優と主題歌を任されることは非常に美味しいとされているが、この頃は、アニメおよびアイドル声優は見下される空気があった。正統派アイドル歌手を目指していた宮里は、『アートミック・デザインワークス(ビークラブ・スペシャル)』(1987年、BANDAI)にて、「えーっやりたくない!」という本音を漏らしていた。  1986年にTV放送されたロボットアニメは、『機動戦士ガンダムΖΖ』『戦え! 超ロボット生命体トランスフォーマー2010』『マシンロボ クロノスの大逆襲』だけになった。同様に、同年メジャー・デビューしたジャパメタ・バンドは、SABBRABELLS、REACTION、Sabrina、KUNIの4バンドにとどまった。ロボットアニメとジャパメタは、TVおよびメジャー・シーンでは沈静化し、新たに生まれたOVAとインディーズメタル、それぞれのシーンに移行したのである。

OVAに起用されたジャパメタ・アーティスト

 80年代後半期、TVアニメでは、『聖闘士星矢』『超音ボーグマン』などでジャパメタ・アーティストが起用されていたが、OVAでももちろん起用されていた。『デビルマン』ではANTHEMが、高橋留美子原作の『1ポンドの福音』(1988年)では浜田麻里が、OVA『湘南爆走族5 青ざめた暁』(1989年)ではLOUDNESSが、そして『風魔の小次郎』(1989年)ではNIGHT HAWKSが起用された。  OVAに起用されたジャパメタのなかでも、アイドル路線の女性メタル・シンガーが目立っていた。“歌謡・メタル・エンジェル”早川めぐみは、OVA『ザ・ヒューマノイド』(1986年)に後期の楽曲「Dancin’ In The Rain ~昨日よりも愛しい人~」が起用されている。  また、のちにB’zを結成する松本孝弘がバックアップした女性メタル・シンガーの杉本誘里は、OVA『アモンサーガ』(1986年)、劇場用アニメ『GREY デジタル・ターゲット』(1986年)、OVA『デジタル・デビル物語 女神転生』(1987年)、OVA『真魔神伝 バトルロイヤルハイスクール』(1987年)などに起用されている。  このように、かつてはアニソンと女性メタル・シンガーが融合していたが、30年経った現在、そのことを知る者は多くない。80年代のOVAと、女性ヴォーカルメタルは、どちらも歴史のなかに埋もれ、忘れ去られていった。
次のページ right-delta
OVAの金字塔『バブルガムクライシス』が遺した功績
1
2
3
4
5
(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

記事一覧へ
ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

おすすめ記事